(2)雲仙火山の火砕流のまとめ

雲仙活断層群の調査においては、各断層の活動性を検討する際に、雲仙火山の溶岩地形、火山麓扇状地面等を変位基準としている。

これらの基準面の内、溶岩地形に関しては、後述するように、USDPプロジェクトによるカリウムアルゴン(K−Ar)年代測定やアルゴン−アルゴン(40Ar/39Ar)年代測定結果が公表されている(宇都他、2003)。

一方、火山麓扇状地を構成する火砕流堆積物に関しては、星住・宇都(2000)による雲仙火山の層序が示されている。しかし、各火砕流の特徴、年代、層序関係については不明な点も残されている。

平成14〜16年度の長崎県の調査において、層序関係や想定される噴火年代から、従来報告されてない火砕流(火砕流T、火砕流U、仁田町火砕流:何れも仮称)を確認している(図3−5)。

そこで、雲仙地域の地形面対比に有効な、新期雲仙火山の火砕流について、各火砕流の同定や対比の基準として、鉱物組成や火山ガラスの屈折率測定を行った。

試料採取に際しては、出来るだけ火砕流本体から採取するように努めた。分析試料の採取地点位置図を図4−69−1図4−69−2に、各火砕流採取地点の露頭写真を図4−70−1図4−70−2図4−70−3図4−70−4図4−70−5図4−70−6図4−70−7図4−70−8に示す。

分析結果を表4−3に、また、火山ガラスの屈折率頻度グラフを図4−68に示す。

各火砕流の年代は、既往文献の値を用いたが、*をつけた火砕流の年代は、平成14〜16年度における長崎県の調査による年代測定結果に基づいた年代値である。

火砕流のより正確な同定には、鉱物屈折率測定が必要と考えられるが、本調査では火山ガラスの屈折率測定のみ実施した。

一部の分析値は平成14、15年度の調査における分析結果を用いた。また、雲仙地域における層序や年代の対比に有効な広域テフラである、阿蘇4、姶良−Tn火山灰(AT)、鬼界アカホヤ火山灰(K−Ah)の分析値を参考として含めた。

これらの火砕流の詳細な検討については、銃鉱物の屈折率測定、火山岩岩石学的検討、微量成分分析等の検討が必要であり、今後も検討していく必要がある。