一方、1990年から5年間続いた雲仙普賢岳の火山活動に伴い、地球物理学、地質学、地球化学、測地学など多方面の研究が進められた。その後、火山活動に関する統一的モデルの構築のため実際に火山体を掘削する「雲仙火山:科学掘削による噴火機構とマグマ活動解明のための国際共同研究」(科学技術振興調整費総合研究課題)が平成11〜16年度に実施された(通称:雲仙火山科学掘削プロジェクト、Unzen volcano Scientific Drilling Project=USDP)。このプロジェクトに関連して、雲仙火山に関する多くの研究が行われている。
雲仙火山の層序に関しては、ボーリングコアの解析、地表踏査及び年代測定結果から、詳細な活動史が明らかにされ(星住・宇都、2000)、それに基づく雲仙火山の地質図が星住他(2002)により示されている。雲仙火山の地質図を図3−4に雲仙火山の層序を図3−5に示す。
星住・宇都(2000)によれば、雲仙火山は約50万年前に活動を開始した。古期雲仙火山は前期(50〜30万年前)と後期(30万〜15万年前)に区分される。古期雲仙火山前期は、雲仙地溝の外側に火山麓扇状地を形成している。一方、古期雲仙火山後期の溶岩は地溝の西側に広く分布しているが、地溝の外側にはほとんど分布しない。このことから、古期雲仙火山後期の活動時期には雲仙地溝がすでに存在したと考えられる。
数万年程度の活動休止期の後、雲仙地溝の中央よりやや東側の現在の普賢岳付近を中心として、新期雲仙火山の活動が始まり、現在まで続いている。
約10万〜7万年前には、野岳火山の活動があり、野岳溶岩や吹越溶岩が噴出した。野岳期の火山活動は、阿蘇4火砕流(8.5万〜9.0万年前:町田・新井、2003)の前後に活動した湯河内火砕流と、それを覆う俵石岩屑なだれ堆積物及び野岳火砕流堆積物からなる(立山他、2002)。
その後、3万〜1万年前に妙見岳火山の活動があり、妙見岳溶岩や、一本松火砕流、垂木台地岩屑なだれ堆積物の活動があった。
妙見火山の山体崩壊後の2万年前以降、稲生山、普賢岳、眉山が形成され、これらを起源とする、古江火砕流、礫石原火砕流、六ツ木火砕流、水無川火砕流の活動があった。
なお、長崎県の活断層調査の過程において、層序関係や活動年代から、今まで報告されていない3つの火砕流堆積物を確認した(火砕流T:7.8−12.6ka、火砕流U:<7.6ka、仁田町火砕流:1.3-5.9ka、何れも仮称、4.7.3章参照)。