(1)千々石断層

千々石断層は田代原付近では、古期雲仙の溶岩円頂丘や火山麓扇状地を切る南落ちの断層崖を形成する東西走向の南落ちリニアメントである。

断層崖下は崖錐堆積物に覆われており、断層の活動性評価は困難である。

田代原の山間低地は千々石断層の活動によって形成されたと考えられることから、断層落ち側に堆積している沖積層の層序を明らかすることによって、千々石断層の活動開始時期に関する情報及びこの間の雲仙火山の噴出物の検討から、雲仙火山噴火史に関する情報を得ることを目的にボーリング調査を実施した。

田代原の大部分は南側の九千部岳の山体崩壊物で覆われており、沖積層の確認が困難と考えられることから、九千部岳の山体崩壊物が達していないと考えられる田代原東端でボーリングを実施した。

 ボーリングの結果、田代原東端部では複数の土石流堆積物が確認され、最上部に薄い泥炭を挟んでローム層が堆積している。泥炭層の14C年代は9750±45ybp(同位体補正年代値)を示すことから、田代原東端付近では最近1万年間は大規模な土石流が発生するような状況にはなかったと推定される。