既往文献の多くは千々石断層の西端は唐比低地東端(唐比漁港西側)の低崖までとしているが、中田・今泉(2002)はこの低崖の西方の唐比低地の北側の丘陵の鞍部に延長するとしている。一方、平成14年度調査における空中写真判読では唐比低地内に南落ちの段差を認めた。なお、唐比低地西側の丘陵地にはリニアメントは判読されないことから、いずれにしても唐比低地が千々石断層の西端と考えられる。
唐比低地周辺の地質は、唐比低地東部で西側の更新統有喜火山岩類に古期雲仙火山麓扇状地堆積物(0.22Ma)がアバットしている。
唐比低地内における千々石断層延長の存在を確認するため物理探査を実施した結果、唐比低地の中央部では基盤上面は緩やかな盆状構造を示しており、断層は確認できない。
ボーリング調査の結果、中田・今泉(2002)のリニアメント位置には完新世に活動した断層は存在しないことが確認された。
国道より北側のボーリングNo.12では(諫早に対して)縄文海進以降0.7m沈降していることが確認された。一方、唐比低地内のボーリングNo.11では、(諫早に対して)縄文海進以降約9m沈降していることが確認された。この結果ボーリングNo.11はNo.12に対して約8m沈降しており、この間(=H14調査のリニアメント位置)に断層が存在する可能性高い。唐比低地で実施した3本のボーリング(No.1、No.2、No.11)の堆積速度変化から唐比低地は同一の構造ブロックと考えられる。
反射法探査では、軟弱湿地における道路建設のための地盤改良により反射記録が不鮮明で、リニアメント位置での断層の存在を否定も肯定もできない。
縄文海進後陸化したNo.11地点に4.5ka頃以降海が進入しており、この時期に沈降(断層運動?)した可能性もある。