各断層を挟んだコアの対比に当っては、対比基準として最も確度が高いと考えられる火山灰層による対比を基準とし、これに音波探査結果、堆積物の粒径や帯磁率などの分析結果から得られた情報を合わせて、対比基準面の認定を行った。対比基準面の一覧表を表5−2−6に示す。また図5−2−2と図5−2−3に各断層の対比基準面をあわせて示した。
F−4(有喜沖断層)のTAT03−01(沈降側)とTAT03−04(隆起側)のコアでは16層準の対比基準面が認定された。また、F−5(橘湾中央断層)ではTAT03−11(沈降側)とTAT03−13(隆起側)のコアでは9層準の対比基準面が認定された。
F−5断層のTAT03−11とTAT03−13コアについては、K−Ah層準(対比基準面8)より下位の深度10m以深では構成粒子の粒径がやや粗粒となり、それぞれの分析値のピークが重複し複雑に推移する。また年代値から算定される堆積速度も一定ではない。K−Ah層準より下位の地層は年代測定結果から最終氷期後の海水準の低かった時期と考えられ、水深が浅く堆積物を移動させる力が強い状況下にあったと推測される。このような場所では地層の連続性が悪く対比の精度が低下するため対比基準面が認定できなかった。
F−4断層のTAT03−01とTAT03−04コアでは、K−Ah層準より下位の地層は年代測定結果から同様に水深の浅い環境であったと想定されるが、K−Ah層準より上位と比べて構成粒子に大きな変化はみられない。このことはF−4断層付近ではF−5断層付近に比べて比較的安定した状況下にあったと推定される。こうした状況からF−4断層ではK−Ah層準より下位についても対比基準面が認定可能であった。
表5−2−6に示した各対比基準面の年代については、各断層の相対的隆起側のコアにおいて、基準面の上下の年代測定層準間の堆積速度が一定であると仮定し、内挿(年代測定結果が上位または下位のみしかない場合は外挿)することにより求めた。この場合、それぞれの年代測定結果の暦年補正値には年代幅があることから、 内外挿年代は各年代測定値の若い値と古い値同士をそれぞれ計算し、それらの年代幅を考慮したものとした。また、暦年補正において複数の年代区間がある場合については、年代区間のうち最も若い年代値と古い年代値からそれぞれ算出した。
以上に述べたコアの試料分析結果と対比基準面を音波探査記録と比較した結果を図5−2−5、図5−2−6 、図5−2−7に示す。断層を挟んだ対比基準面は、音波探査記録に見られる反射面と良い対応を示している。この結果から、コアサンプリングを実施しない断層においても音波探査記録から断層変位の概略を推定することが可能であると考えられる。
表5−2−6 対比基準面一覧表