音波探査から推定される断層の分布および各断層の変位量を図5−1−5と図5−1−7に示す。
音響散乱層の存在から堆積物の構造が把握できない海域もあるため確定的ではないが、橘湾に分布する断層の走向は、東西走向の正断層が卓越し、湾北部、湾中央、湾南部に分布が集中する傾向が認められる。
橘湾北部の断層群はその分布から、陸域の千々石断層及び九千部岳T断層の延長と考えられる。
陸域の金浜断層沖の断層群は、橘湾南東部から橘湾中部を西北西に連続し、湾北西の牧島沖まで分布している。
一方、陸域の諏訪池断層の西方延長部に分布する断層群は、南串山沖から長崎半島茂木沖まで東西に連続する。
しかし、これらの断層は南串山沖では変位量が3mを超えるものの、西に向かって変位量が小さくなっていき、橘湾西部の大崎周辺に分布する断層群で再び変位量が2mを超え、最大2.5mの変位を示すようになる。また、橘湾西部の断層は南落ちが主体である。したがって、橘湾西部の断層群は南串山から西にのびる断層群とは別の断層群である可能性がある。
橘湾西部の断層群と雲仙活断層群との関係を明確にする事は、雲仙活断層群の西端部を決定する上で重要である。今後は、過去の音波探査結果を含めて再検討を行い、断層の変位量についてより詳細な区分を行い、橘湾全体の評価を行う必要がある。
これらの断層の活動性の概略を検討するため、音波探査記録からK−Ah層準の垂直変位量を読み取った。橘湾における断層のK−Ah層準の垂直変位量は概ね3m以下であり、大部分は1m未満である。3mを越える変位量をもつ断層は、橘湾南東部の小浜〜金浜沖、南串山沖、及び橘湾西部の長崎半島茂木沖に限られる。
表5−1−1 音波探査結果における断層総括表