海上試料採取に当たり、詳細な断層位置の確認と海底状況を確認することを目的に、断層付近の2km区間を中心に音波探査を実施した。
音波探査により、完新統の地質構造が明瞭に確認できる音響断面が得られ、松岡・岡村(2000)に示された3本の断層を確認した(F−4、F−5、F−6断層と仮称する)。さらに,F−4断層に付随すると考えられる断層を新たに認めた(F−4’断層)。
これらの断層は、延長4km未満で、走向がほぼ東西方向で北落ちの断層である。また、K−Ah層準と推定される反射面における垂直変位量は最大で1.1mである。
橘湾北部の探査測線位置と断層の分布を図5−1−2に、音波探査記録を図5−1−3と図5−1−4に、また橘湾北部における断層の総括表を表5−1−1に示す。
変位の累積性が認められた3断層(F−4、F−4’、F−5断層)を、断層の活動性確認のための海上試料採取の対象として選定し、各々の断層の両側に海上試料採取地点の目標としてブイを投入した。
F−4断層は橘湾北部有喜沖の延長約2kmの北落ちの断層で、音波探査記録から読み取ったK−Ah層準の変位量は約0.9mである。F−4’断層はF−4断層に付随すると考えられる南側に平行する北落ち断層で、K−Ah層準の変位量は約0.9mである。F−5断層は橘湾中央部の延長約4kmの北落ちの断層で、K−Ah層準の変位量は約1.1mである。