4−8 塔ノ坂断層(新称)

金浜断層の東北延長地域には塔ノ坂の盆地に向かって北東−南西の直線的な谷が発達する。

既往文献の多くではこの谷は金浜断層の延長として表現され、金浜断層リニアメントは金浜川上流の西南西−東北東から南西−北東へと曲り、高岩山断層西端部まで北落ちセンス(千田、1979:堤、1987)、もしくは落ちのセンスの記載のない推定断層とされている(九州の活構造、1989:国土地理院、1991)。

一方、中田・.今泉(2002)では金浜断層は北落ちの推定断層とされ、塔ノ坂から北東にのびる谷に南落ちの推定断層が示されている。

平成14年度調査における空中写真判読結果では、塔ノ坂から北東にのびる直線谷の地形は北岸がより急峻で直線的であり、南側は傾斜も緩く直線性に欠けるため、南落ちの断層リニアメントとして表現した。

前述したように金浜川上流部において南落ちの断層を確認したことから、雲仙地溝南縁部に一般的な北落ちセンスの断層以外に南落ちの断層の存在が否定できなくなった。塔ノ坂を中心とする北東−南西方向の直線的な谷地形に対しては、落ちのセンスが異なることから金浜断層とは別の断層とし、塔ノ坂断層(新称)として区別した。塔ノ坂断層付近の地形区分図を図4−8に示す。

塔ノ坂断層は古期雲仙火山後期の溶岩からなる山地の谷沿いの断層で、活動性評価に関する調査は困難である。しかしながら、金浜川上流部の南落ちの断層、金浜断層リニアメントとの関係については今後も検討する必要がある。