金浜断層は新編日本の活断層(1991)では金浜川の谷のほぼ全域が確実度Vとされ、中田・今泉(2002)では金浜川の中〜上流部のみが推定断層とされる。九州の活断層(1989)では一覧表に記載は無く、金浜川上流部のみ推定断層として図示されている。
平成14年度調査における空中写真判読結果では、金浜川の中〜上流では南岸の尾根末端部の直線的急崖の連続として金浜川にほぼ平行なリニアメントが判読されるが、下流部では尾根末端の直線崖の方向が不規則となりリニアメントが不明瞭になる。
金浜川周辺の地質は、金浜川の南側は古期雲仙火山前期(500〜300ka)の噴出物が分布し、火山麓扇状地(高位扇状地面)を形成している。この扇状地は開析が進んでおり、地形面としては尾根の頂部に断片的に残るのみである。一方、金浜川の北側には古期雲仙火山後期(300〜150ka)の溶岩円頂丘や溶岩が分布している。したがって、金浜断層は古期雲仙火山の前期と後期の噴出物の分布を規制していると考えられ、北側が相対的に沈降した断層とされてきた。
地形的には金浜川北側の古期雲仙火山後期の溶岩円頂丘は、南側の古期雲仙火山前期の火山麓扇状地面より高くなっている。また、金浜川の下流部ではリニアメントは不明瞭である。したがって、地質断層としての金浜断層は存在するものの、完新世における活動性は低いと推定される。しかしながら、断層位置周辺は耕作地となっており、トレンチ調査等を実施するのは困難である。
一方、平成14年度調査において、金浜川河口沖合にほぼ東西走向の断層群が確認された。これらの断層は、K−Ah火山灰の層準が最大で約5m変位しており、K−Ah火山灰降下の7300年前以降2〜3回のイベントがあったことが明らかとなった。K−Ah火山灰降下以降の平均変位速度からは活動度はB級である。これらの海域の断層群は陸域の金浜断層との直接の関係は不明であるが、金浜断層の西方延長部に位置する。
平成14年度の海域調査の結果から、陸域の金浜断層についても断層位置の特定や活動性に関する情報を確認するため、地表踏査を実施した。踏査の結果、従来報告されていない断層露頭を確認し、金浜断層の実態が明らかになった。
地表踏査によって確認した地質分布や断層露頭の存在から、金浜川に沿って北側が相対的に落ちた地質断層の存在は確実であるが、地形的には金浜川北側の古期雲仙火山後期の溶岩円頂丘は、南側の古期雲仙火山前期の火山麓扇状地面より高くなっている。また、金浜川の下流部ではリニアメントは不明瞭である。したがって、地質断層としての金浜断層は存在するものの、完新世における活動性は低いと推定される。しかしながら、断層位置周辺は耕作地となっており、詳細調査等を実施するのは困難である。