(1)ボーリング調査の目的

深江断層と布津断層は、リニアメント位置にそれぞれ断層露頭を確認したことから断層が存在することは明らかである。しかし、俵石岩屑なだれ堆積物が分布する布津断層西部を除き、両断層とも断層上がり側の変位基準面が断層落ち側に分布しないため、地形から変位量を算定するのが困難である。したがって両断層の変位量は、地質断面図による湯河内火砕流堆積物の変位量を基本として算定した。しかし、これらは湯河内火砕流堆積後の総変位量であり、断層活動の時期や1回の変位量に関しては判定できない。

トレンチ調査の結果からは、布津断層における最新活動時期に関する概略の情報が得られたが、変位量に関しては不明である。

一方、深江断層と布津断層の東方延長部の海域の音波探査結果から、両断層が海域に連続することが推定される。また、布津断層落ち側の低位扇状地T’面および深江断層落ち側の低位扇状地Ub面は、海岸付近で沖積層下に埋没している。したがって、深江断層や布津断層が活動した時に断層落ち側が沈降したとすると、海岸付近に海が侵入し海成層が形成されたと推定される。

そこで、断層落ち側の海岸付近において、断層運動に伴う沈降により海が進入した可能性が推定される地点でボーリング調査を実施し、層相や微化石分析(珪藻化石)による古環境解析と年代測定から海の侵入した時代が明らかになれば、断層の活動時期及び変位量が推定できると考えられる。

この原理から、布津断層と深江断層の活動時期と変位量に関する情報を得るためにボーリング調査を実施した。