(3)俵石岩屑なだれ堆積物

俵石岩屑なだれ堆積物は野岳起源の山体崩壊物と考えられており、低位扇状地T面及びT’面の上流部に広く分布し、湯河内火砕流堆積物を不整合に覆う。

図4−6−7−1図4−6−7−2に俵石岩屑なだれの露頭写真を示す。各露頭の位置は図4−6−2−1図4−6−2−2に示す。

俵石岩屑なだれ堆積物は層相的に2つに分けられる。

有家町県道132号線沿い(図4−6−2−1図4−6−2−2:露頭F)には、クサリ礫を含み、基質が黄褐色ローム状に風化した俵石岩屑なだれ堆積物が分布する。俵石岩屑なだれ堆積物はAT火山灰(26−29ka)及びK−Ah火山灰(7.3ka)を挟在する黒ボク層に覆われる(図4−6−7−1)。俵石岩屑なだれ堆積物の基質には風化のため火山ガラスが殆ど含まれず、重鉱物も輝石が消失している。

一方、布津町桜苑入り口の切り割法面(図4−6−2−1図4−6−2−2:露頭G)には、新鮮な安山岩礫を主体とする俵石岩屑なだれ堆積物が分布する(図4−6−7−2の上段)。

俵石岩屑なだれ堆積物と下位層の関係では、深江町古江名の深江断層の断層崖の上部斜面(図4−6−2−1図4−6−2−2:露頭H)において、層位関係からY3と考えられる湯河内火砕流堆積物を、俵石岩屑なだれ堆積物が不整合に覆っている(図4−6−7−2の中、下段)。

地表踏査の結果から、俵石岩屑なだれ堆積物は湯河内火砕流を不整合に覆い、AT火山灰に覆われることが確認された。

俵石岩屑なだれ堆積物の年代については直接の年代測定の報告はないが、湯河内火砕流を不整合に覆うこと、及びAT火山灰に覆われることから、本報告書では俵石岩屑なだれ堆積物の時代を約60kaとする。

地表踏査の結果から、俵石岩屑なだれ堆積物の分布が布津断層及び深江断層で規制されていることは明らかである。俵石岩屑なだれ堆積物は布津断層の落ち側では上がり側に比べてより下流側まで分布しており、俵石岩屑なだれが堆積した時には布津断層の断層崖が既に存在したと考えられる。また、上流部では俵石岩屑なだれ堆積物を布津断層が変位させているが、変位量が下流部に比して小さいことから、俵石岩屑なだれによって、布津断層の断層崖が一旦埋められた可能性がある。したがって、俵石岩屑なだれ堆積物の地表に見られる布津断層による変位は、俵石岩屑なだれ堆積後の布津断層の活動を示していると考えられる。

俵石岩屑なだれ堆積物の分布の北限は深江断層で切られている。現在、深江断層落ち側には俵石岩屑なだれ堆積物の分布は確認出来ないが、これはその後の古江火砕流堆積物(23ka)によって覆われたか削剥されたと考えられる。