4−3−1 舞岳林道法面の断層露頭(平成14年度調査結果)

雲仙火山では平成11年度以来「雲仙火山:科学掘削におよる噴火機構とマグマ活動解明のための国際協同研究」(文部科学省振興調整費による総合研究:研究代表者 宇都浩三(独立行政法人産業技術総合研究所地球科学情報部門火山活動研究グループ長)(USDPプロジェクトと呼称する)が行われており、その一環として平成新山の火道掘削(USDP−4)が計画され、平成15年度から平成16年度に掘削が行われている。これに先立ち、掘削地点へのアクセス道路として舞岳林道が平成14年度に拡幅され、林道法面、掘削サイト法面及びピット壁面に断層露頭が出現した。これらの断層露頭については平成14年度調査において露頭観察を行い報告した。

舞岳付近の地形区分図を図4−3−1に、舞岳林道ルートマップを図4−3−2に示す。

舞岳林道で確認された断層露頭のうち、千々石断層東部南分枝の断層露頭の林道法面スケッチ及び法面の写真を図4−3−3に示す。

千々石断層東部南分枝リニアメントとほぼ平行する林道法面に、リニアメントと平行な南落ちの断層が確認された。

断層の上がり側は古期雲仙火山後期の舞岳火山の自破砕状安山岩溶岩である。

一方、断層落ち側で確認される最下部層は14C年代測定で25,140±150yBP を示す黒ボク層で、その上位にAT火山灰(24−25ka;暦年では26−29ka:町田・新井、2003)が確認される。両層は断層によって切られており、断層面に沿って変形している。

AT火山灰の上位には軽石を含む原口町火砕流堆積物が堆積している。この原口町火砕流堆積物の下半部は灰色を呈し、上半部は暗灰色を呈する。火山灰分析の結果からは上下で軽石の岩石学的特徴に差は無く、両者の色の差は風化程度の違いによると考えられる。

断層との関係では、原口町火砕流堆積物の下半部は断層で切られており、断層による変位を受けているように見える。一方、上半部はブロック化するものの断層面を乗り越えて分布する。

原口町火砕流堆積物の上位には、14C年代測定値で18,520±100 ybp(22,465−21,550 cal ybp)を示す黒色土を挟んで礫石原火砕流堆積物が堆積する。礫石原火砕流堆積物は断層をはさんで連続して分布する。図4−3−3のスケッチの西方(左方)範囲外になるが、礫石原火砕流堆積物の上位には、16,090±80 ybp(19,605−18,805 cal ybp)を示す黒色土を挟んで湯江川火砕流堆積物が堆積している。その上位にはシルト質風化ローム層、K−Ah火山灰を挟在する黒ボク土が覆っている。K−Ah火山灰は断層付近では連続していない。

原口町火砕流堆積物が断層で切られているかどうかの判断は、法面と断層面がほぼ平行なことから、この露頭では困難である。しかしながら、この断層の最新活動時期については、AT火山灰噴出(24−25ka:暦年で26−29ka)以後、礫石原火砕流堆積(19ka:暦年で22ka)までの間と判断される。