珪藻化石は生息環境によって種類が異なることから、堆積物中に含まれる珪藻化石の種類から堆積環境が推定できる。したがってボーリングコアの各層準の古環境の変遷から堆積環境を検討するために珪藻化石分析を実施した。
また、深江断層・布津断層におけるボーリングにおいては、低位扇状地T面及びT’面の構成層は少なくともとも8万年より古いと考えられることから14C年代測定法が適用できない。そのため、花粉分析により堆積当時の古気候(気温)を推定して古気候変遷史から堆積年代を推定する目的で花粉分析を実施した。
分析試料は千々石断層西端部唐比低地のボーリングNo.11孔(22試料)、No.12孔(18試料)、及び深江・布津断層のボーリングNo.2孔(25試料)、No.3孔(18試料)、No.5孔(23試料)の5孔から採取した(計106試料)。分析試料の採取深度の一覧を表4−11−3−1に示す。なお、以下の議論では各ボーリングの孔番については唐比ボーリングNo.11、No.12をそれぞれK11、K12、深江・布津断層ボーリングNo.2、No.3、No.5をそれぞれF2、F3、F5と略記する。
唐比低地では平成14年度における調査結果から淡水環境で堆積したと考えられる腐植質土層の中にも汽水生や海水生の珪藻が産出することが知られており、環境変化の詳細を明らかにするため断層が推定される両側の2本のコア(K11、K12)で基本的に40cm毎に試料を採取した(K11:22試料、K12:18試料、計40試料)。
一方、深江断層・布津断層におけるボーリングでは、断層の活動によって進入したと推定される海成層を確認するため、低位扇状地構成層の上位に堆積している砂層について40cm毎に採取した(F2:21試料、F5:15試料、計36試料)。さらに、F5コアにおいて低位扇状地構成層中に生痕化石が確認され、低位扇状地構成層堆積中にも海進があった可能性が考えられた。このため、F2とF3コアにおいても低位扇状地構成層中の砂層について、海成層の確認のため珪藻分析を行った(F2:4試料、F3:18試料、F5:8試料、計30試料)。これらの扇状地構成層は14C年代測定の測定限界を超えているため、古気候から堆積時代を検討するためF3とF5コアにおいて花粉分析(F3:5試料、F5:8試料、計13試料)を実施した。