年代測定の方法は、試料が多く採取できた場合はβ線計数法により14C年代を測定した。有機質の少ない場合には適宜、低濃度有機物処理や長時間測定を実施した。また、ボーリングコア試料や地層中に含まれる微量な炭化物の場合には、AMS法によって14C年代測定を行った。
唐比低地のボーリングコアでは、腐植質土が厚く堆積しており、堆積速度を検討するため層区分の上・下端から採取し、併せて挟在される火山灰層直下の試料を採取した。
一方、深江断層・布津断層におけるボーリングにおいては、砂礫層主体のため堆積速度が一定とは限らないため、挟在する腐植層毎に採取した。
また、トレンチ法面に関しては、基本的に区分された層毎に採取したが、層相によっては14C年代測定に適する試料が得られなかった場合もある。
この他、これらのボーリング調査やトレンチ調査の結果を検討するため、調査地点周辺の地質・層序を確認するための踏査を行った際に、地層の堆積年代を検討するため露頭から有機質を含む14C年代測定用試料を採取した。
雲仙地域は火山地域のため層相からの地層対比が困難であり、また対比の基準となるテフラも少ないため、ボーリングコアやトレンチ法面における地層の対比の基準として年代測定が重要となる。このためボーリングコアやトレンチ法面における層区分毎に年代測定を実施する必要がある。
炭化物が地層中に点在する場合やボーリングコアから採取した腐植質土は試料中の炭素量が少ないためAMS法による年代測定を実施した(53試料)。一方、ボーリングコア採取した木片のように炭素量が多い試料や、炭素含有量が少なくても十分な量の試料が得られた場合にはβ線計数法による年代測定を実施した(35試料)。
AMS法やβ線係数法によって得られた年代測定値は、δ13Cの値により同位体分別補正を行い、さらにIntcal98により暦年補正を行った。年代測定結果を表4−11−2−1、表4−11−2−2、表4−11−2−3、に示す。
本報告書における14C年代測定値は特に明示しない場合を除き、暦年補正値の幅で表現する。暦年補正時にはIntcal98の補正カーブにより該当する年代区間が2〜3区間になる場合があるが、この場合でも本報告書では最古と最新の両端の年代幅として示した。