(3)微化石分析

古環境を解析するために、珪藻化石・花粉化石の抽出・同定を行う。試料の採取間隔・採取方法については、対象とする化石に応じて、最適な方法を採用する。

以下に珪藻化石と花粉化石の分析方法について示す。

@ 珪藻分析

湿重試料約10gについて、過酸化水素水と塩酸により試料の泥化と有機物の分解・漂白を行う。分散剤を加えた後、蒸留水を満たし放置する。その後、上澄み液中に浮遊した粘土分を除去したうえで、珪藻殻の濃縮を行う。この操作を4〜5回繰り返す。次に、L字形管分離で砂質分の除去を行い、検鏡し易い濃度に希釈し、カバ−ガラス上に滴下して乾燥させる。乾燥した試料上に封入剤のプリュウラックスを滴下し、スライドガラスに貼り付け永久プレパラ−トを作製する。

検鏡は油浸対物レンズを用い総合倍率600倍または1000倍で行い、メカニカルステ−ジを用い任意に出現する珪藻化石が200個体以上になるまで同定・計数した。なお珪藻殻が半分以上破損したものについては同定・計数は行っていない。珪藻の同定と種の生態性については、Hustedt(1930−1966)、Krammer & Lange−Bertalot(1985〜1991)、Desikachiary (1987) などを参考にした。

A 花粉分析

花粉・胞子化石の抽出方法は、以下の手順で行った。分析試料10g前後を秤量する。塩酸処理により炭酸塩鉱物を溶解し、遠心分離法により水洗を繰り返して溶解液と塩酸を除去する。フッ化水素酸処理により試料中の珪酸質を溶解し、遠心分離法により水洗を繰り返して溶解液とフッ酸を除去する。残渣沈殿物に重液(ZnBr2比重2.2)を用いて遠心分離法にて鉱物質と有機物を分離させ、浮上した有機物を濃集する。濃集した有機物残渣を遠心分離法により水洗を繰り返して洗浄する。有機物残渣に氷酢酸を用いて脱水した後、アセトリシス処理(濃硫酸:無水酢酸=1:9)を行い植物遺体中のセルロースを加水分解する。その後、遠心分離法により氷酢酸に置換し、さらに遠心分離法により水洗を繰り返して、酸分を除去する。最後にKOH処理(10%溶液)により腐植酸を溶解し、遠心分離法により水洗を繰り返して腐植酸とKOHを十分に除去する。

検鏡に当たり、プレパラートの作成は、タッチミキサーでよく攪拌した直後の残渣液を木本花粉の合計が200個体以上になるようにマイクロピペットで適量とり、グリセリンで封入する。検鏡は、生物顕微鏡のプラン・アポクロマート対物レンズを用い、通常400〜600倍(必要に応じて1000倍)で観察し、プレパラートの2/3から全面を走査し、その間に出現した全ての種類(Taxa)について同定・計数することを原則とする。なお、花粉化石の産出が非常に少ない試料については、プレパラートの全面または複数のプレパラート全面を走査・観察して花粉化石の同定・計数を行った。