低位扇状地T面の構成層は、下位より順にクサリ礫を含む風化の進んだ古期火砕流堆積物、新鮮な新期火砕流堆積物、最上位の土石流堆積物からなる。リニアメントを横断する方向では、これらの堆積物の分布は、地形から推定される断層の落ち側(北側)に階段状に低下している。一部では断層崖斜面の地形的に高い位置に古期火砕流堆積物が分布し、その前面のより低い位置に新期火砕流堆積物が分布している。これは平行する複数の断層が存在する可能性を示しているとも考えられるが、断層崖の落ち側の低地を流下した新期火砕流堆積物が斜面にはりついている可能性もある。また、布津断層を挟んで上がり側と落ち側の扇状地構成層に時代の違いがある可能性もあり、布津断層を挟んだ扇状地構成層の層序を詳細に検討する必要がある。
布津断層の主部において、断層崖下の切土法面に、扇状地構成層の土石流堆積物と崖錐堆積物とローム層が高角度の面で接する断層露頭を確認した。本露頭は掘削により形状が大きく変化している。当初は、火砕流堆積物と崖錐堆積物の両方を覆うローム層が観察されたが、この露頭は土砂採取のため消滅した。後退した法面には布津断層リニアメント方向とはやや斜交する断層が2条認められる。2条の断層で挟まれた火砕流堆積物は破砕されて粘土化している。断層の落ち側に分布するローム層は黄褐色で暗色のバンドが数枚認められるが、断層面付近ではこのバンドの分布は不明瞭となる。一方、火砕流堆積物中には砂層が数枚認められ、断層で切られている(図2−2−11)。
また、断層露頭の東側には、布津断層の落ち側の崖錐堆積物上に成層したローム層が堆積しており、AT火山灰、K−Ah火山灰が挟在される。
断層露頭の西側の断層延長部の自然斜面においてトレンチ調査を実施し活動履歴の検討を行う。調査に先立ちハンドボーリングにより被覆層の確認を行う。
また、布津断層を挟んだ上がり側・落ち側の扇状地構成層の層序について詳細に検討する。