この露頭では、新期雲仙火山の噴出物と考えられる火砕流堆積物と崖錐堆積物が、ほぼ垂直な境界で接しており、南落ちセンスの断層と考えられる。落ち側に火砕流堆積物が露出していないので落差は不明であるが、露頭の高さから少なくとも4m以上の変位量が推定される。火砕流堆積物と崖錐堆積物の境界は鉛直に近いが不規則で、断層の走向傾斜は不明である。
断層落ち側の崖錐堆積物の上には乱れた黒ボク土層が堆積している。黒ボク土はK−Ah火山灰の混入が認められ、14C年代測定値は330±40ybp(暦年補正なし)であった。
この露頭の東方には低崖があり、低崖上にはK−Ah火山灰を挟在する黒ボクが堆積している。したがって、断層露頭の乱れた黒ボク土層は、周辺に堆積した黒ボク土層が、断層活動に関連して、当時存在した低崖下に定置したものと考えられる。
以上の結果からみて、本断層は、少なくともK−Ah火山灰降下(cal 7ka)以降に活動した可能性があり、数百年前に活動した可能性も否定できない。
これらの露頭状況は、上述した国道389号法面における千々石断層東部の断層露頭と酷似する。
両者ともに明瞭な剪断面を持たないため、アバット関係の可能性もあるが、リニアメントに一致する垂直な地層境界であることから断層露頭と判断される。剪断面が認められないことは、断層による変位を受けた際に、充分固結していなかったために剪断面が出来なかったと解釈される。