本露頭では、古期雲仙火山新期の安山岩溶岩とそれを覆う火砕流堆積物が、リニアメントに平行な走向のほぼ垂直な境界で土石流堆積物と接している。
断層落ち側の土石流堆積物の上位にはローム層が約5m堆積しており、断層上がり側の火砕流堆積物と接している。ローム層の堆積構造からは火砕流堆積物の崖にアバットしているようにも見える。
本露頭における火砕流堆積物と土石流及びその上位のローム層との境界は不規則で剪断面等は認められない。しかしながら、境界がほぼ垂直で走向が千々石断層リニアメントの方向に一致していることから千々石断層の活動と関連していると考えられる。
ローム層には最下部にAT火山灰由来の火山ガラスが混入しており、下端から50cm以上の層準にはK−Ah火山灰が混入している。最上部の20〜30cm間ではK−Ah火山灰は少量となる。
ローム層の上部(ローム層上面より90〜120cm下)付近には炭化木片が多く含まれ、炭化木片の14C年代測定値は暦年でAD1427〜1484と非常に新しい年代を示した。
これらの結果から、この断層はK−Ah火山灰降下後に活動した可能性が考えられる。また、炭化木片の時代が15世紀であることから、1792年の地震の際にこの断層が活動した可能性も考えられる。ただし、地震動による土砂崩れ等により、当時存在した断層崖の落ち側に、炭化木を含む地層が流入堆積した可能性も否定できない。また、大量の炭化木片の存在は、15世紀ごろにこの付近で大規模な山火事があった可能性を示唆する。対応する事象としては、1663年の古焼溶岩や1792年の新焼溶岩の噴出が考えられる。以上のようなこの露頭の解釈については、古文書等の調査も含め、さらに明確にする必要がある。