(4)ボーリングコアの分析

唐比低地では縄文海進付近の層準が約11m沈降していることが報告されている(松岡他、1990、1993、1996)。したがって、唐比低地の古環境の変遷から断層運動を検討するため唐比低地でボーリング調査を実施した。

唐比低地西部において実施した唐比No.2ボーリング(掘削長46m)のコアについて、14C年代測定や火山灰分析による年代決定、花粉分析による古気候解析、珪藻化石や貝化石による堆積環境の解析等を総合して、唐比低地の古環境を考察した。分析結果を図2−2−3に示す。

コアの分析結果を以下に示す。

・最終間氷期(Stage5e:12〜13万年前)の海進期の堆積物が現在、深度−30m付近に存在していることから、本地域はそれ以降全体として沈降域であった可能性がある。

・縄文海進最盛期の汀線付近の層準が現在、深度−11.60m付近に沈降している。

・縄文海進以降の唐比低地における海水−淡水環境の環境変化は海水準変動のみでは説明が困難で、唐比低地の海側のリッジ状のバリアの形成や、千々石断層の活動と関連している可能性が考えられる。

・唐比低地における千々石断層の正確な位置が不明なため、単独のボーリングデータから本地域の構造運動を論じるとことは出来ない。