小浜〜金浜沖でみられた24本の断層のうち、8本で完新統中の変位の累積性が確認された。また、唐比〜千々石沿岸の海域でみられた37本の断層のうち、6本で完新統中の変位の累積性が確認された。
小浜〜金浜沖に分布する、明瞭な変位が認められた3本の断層(南側からF−1、F−2、F−3断層)は、いずれも延長は1km前後と小規模なものであるが、表層の堆積物に明瞭な累積性をもった変位がみられた。各断層の変位はF−1が南落ち、F−2、F−3が北落ちである。
F−1〜F−3断層を対象として海上試料採取(ピストンコアリング)を実施し、これらのコアに対して試料分析を行なった結果から、各断層での対比を行い、断層のイベント層準を検討した(図4−3、図4−4)。
F−3断層ではアカホヤ火山灰以後2回のイベントが認められる。イベントの時期は、1400−2700yBP付近(暦年補正値:900−2600yBP付近)、4400−5000yBP付近(暦年補正値:4600−5300yBP付近)と判断された。コアにみられる層厚変化の状況からみて、1回の変位量は0.7〜0.8m程度である。
F−2断層では、明瞭なイベントと特定できるのは4800−6700yBP頃(アカホヤ火山灰の降下時期からpumiceの下層堆積:歴年補正値5000−7200 yBP付近)の1回であった。これより新しいイベントも確実に存在したと考えられるが、イベント付近の堆積物の状況から特定は難しい。イベント層準の変位量は約5.3mと読み取れるが、これはアカホヤ火山灰堆積以後の総変位量と捉えるのが妥当である。
F−1断層についてもF−2断層とほぼ同様な状況である。変位量はアカホヤ火山灰堆積以後の総変位量として約1mとみられる。
以上の結果から、F−2断層の変位量がやや大きいものの、いずれの断層でもアカホヤ火山灰以後の活動度はB級程度と考えられる。
F−1、F−2、F−3の3断層は、ごく隣接した位置にあり、規模も比較的似通ったものであることから、同時に活動していた可能性は十分に考えられる。今回の調査でも(F−1、F−2断層の最新イベントの特定は出来なかったが)、同時期に活動していたという解釈に矛盾しない範囲の値が得られた。ただし、F−1、F−2断層のイベントが明らかにpumice層堆積(約4900yBP)の前に発生しているのに対し、F−3断層のイベントはpumice層堆積後に動いたものである可能性も有しており、イベント発生時期の同時性について断定は出来ない。
最終的な結論には、今後実施されるその他の断層の活動性との比較検討が必要である。