田代原は千々石断層の落ち側の低地で、南側の九千部岳の山体崩壊物が広く覆っており地表にも安山岩礫が分布している。調査地点として、九千部岳崩壊物の影響が少ないと考えられる田代原東端の田代原牧場内を選定した。ボ−リング地点を図3−4−3に示す。
掘削の結果、地表から1.23mで固結した土石流堆積物に到達した。その下位に複数の土石流堆積物が分布していることを確認したことにより、調査委員会委員と協議した結果、所期の目的を達成するのは困難であると判断し、深度15mで掘進終了とした。簡易柱状図を図3−4−4に示すと共に、柱状図とコア写真を巻末資料に収めた。
田代原地域は九千部岳崩壊物に広く覆われ、調査の適地は今回のボーリング地点しかないこと、また、実施に当って許可申請手続に日数がかかることから、本年度の田代原における追加調査は断念した。
以上のような調査結果から、雲仙火山の火山灰層序確立という目的は本年度調査では達成できなかった。
しかしながら、田代原牧場内では、深度1.23mより上位には砂礫等は挟在されず、周囲の山体が崩れるような大規模なイベント(地震)はなかった可能性が高いと考えられるので、この地域での千々石断層の最新活動時期の上限に関する情報が得られる可能性がある。