3−3−5 布津断層

布津断層は、深江断層と同じくは雲仙地溝の東側南縁に位置する北落ちの断層で、新期雲仙火山の野岳期に形成された低位扇状地面T面とその構成層およびこれを覆う俵石岩屑なだれ堆積物を変位させていると推定される。布津断層周辺のルートマップを図3−3−32に断面図を図3−3−33に示す。

布津断層東部の地形区分図を図3−3−34に、地形写真を図3−3−35に示す。

布津断層の主部は比高50m以上の断層崖がみられるが、断層崖は開析が進み、一部では崩壊のため断層位置の認定も難しい。崖下には崖錐堆積物や土石流堆積物が厚く堆積しているため、トレンチ等で断層の活動性を評価するにはあまり適していない。

断層東端部付近では、深江断層のような顕著な扇状地面の高度低下は見られず、比高約40mの断層崖がみられる。崖下は崖錐堆積物に覆われているものの、断層崖を流下する沢の末端は直線的である。

○断層露頭

布津断層の主部において、断層崖下の切土法面に、火砕流堆積物とローム層と崖錐堆積物が高角度の面で接する断層露頭を新たに確認した。露頭位置を図3−3−36に示す。

切土工事の当初は、火砕流堆積物と崖錐堆積物の両方を覆うローム層が観察された(図3−3−37)。ローム層は褐色ローム層と暗色ローム層の互層からなり、布津断層面直上に低角小断層が認められた。小断層の性状を確認する目的で、小断層の下盤にある2枚のローム層(試料Fk−1(2)、(4))と断層の上盤側のローム層(試料FK−(11)、(13))の火山灰分析を実施した(図3−3−38、上図)が、上盤側FK−1(13)以外の3試料に明確な差は認められず、変位の方向は確認できなかった。

その後、この露頭は土砂採取のため消滅したが、新たに図3−3−39−1図3−3−39−2図3−3−39−3に写真とスケッチ示したような露頭が出現した。

この露頭には、布津断層のリニアメント方向とはやや斜交する断層が2条認められた。2条の断層で挟まれた火砕流堆積物は破砕されて粘土化している。断層の落ち側に分布するローム層は黄褐色で暗色のバンドが数枚認められるが、断層面付近ではこのバンドの分布は不明瞭となる。一方、火砕流堆積物中には黄褐色の砂質部が数枚認められ、断層で変位していることが確認できる。

また、断層露頭の土取場の入り口付近には、布津断層の落ち側の崖錐堆積物上に成層したローム層が堆積している(図3−3−38、下図)。分析の結果、暗色バンドに挟まれた層準の試料FK−1(28)がAT火山灰に同定された。断層付近ではAt火山灰層は職説には確認されていないが、この露頭と対比するとAt火山灰層準は断層落ち側のローム層の中央付近に相当すると考えられる。その場合は、この断層はAT火山灰噴出後に活動したと考えることができる。この土取場入り口付近の露頭は、今後、当地域の火山灰層序を考える上での標準となり得ると思われる。