(3)断層露頭B

千々石断層の南分枝リニアメントとほぼ平行する林道法面に、リニアメントと平行な南落ちの断層が出現した。露頭全体の写真と露頭スケッチを図3−3−21−1図3−3−21−2に、断層位置の写真と露頭スケッチを図3−3−22−1図3−3−22−2に示す。

この断層付近には古期雲仙火山後期の舞岳火山の自破砕状安山岩溶岩と新期雲仙火山起源と考えられる軽石を含む火砕流堆積物と礫石原火砕流堆積物が覆っている。

軽石流堆積物の下位にはAt火山灰層が確認された(火山灰分析:試料M3.3)。この地層は断層により変位している。また、AT火山灰の下位の黒ボク質の暗褐色粘土層の放射性炭素年代測定値(試料1202−3 D1)は25,140±150yBPであった。この値は、知られているAt火山灰の噴出年代(21,000〜25,000yBP)と整合的である。

At火山灰の上位の軽石流堆積物の下半部は灰色であるが、上半部は暗灰色を呈する。火山灰分析の結果、上下で軽石の岩石学的特徴に差は無く、両者の色の差は風化程度の違いによると考えられる(火山灰分析:試料M3−3L、M3−3U)。軽石流堆積物の下半部は断層付近で途切れており、断層による変位を受けているように見える。一方、上半部はブロック化するものの断層面を乗り越えて分布する。

軽石流堆積物の上位には放射性炭素年代測定値で8,520±100yBPを示す(試料1202−3 D3)黒色土を挟んで礫石原火砕流堆積物が堆積する。さらに上位には、16,090±80yBP(試料1202−3 D4)を示す黒色土を挟んで湯江川火砕流堆積物が堆積している。

軽石流堆積物が断層で切られているかどうかの判断は、法面と断層面がほぼ平行なことから、この露頭では困難である。しかしながら、この断層の最新活動時期については、At火山灰噴出(21〜25ka)以後、礫石原火砕流堆積(19ka)までの間と判断される。