(4)田代原

田代原付近では、千々石断層は古期雲仙火山の溶岩からなる山体を南落ちに大きく変位させている。変位量は270m以上である。

田代原は断層落ち側の低地で、表層の大部分は南側の九千部岳からの崩落物による扇状地堆積物に広く覆われている(図3−3−9図3−3−10)。地表にも岩塊が認められ、放牧地内のガリに見られる表層堆積物も厚さ30cm程度の黒ボク質土しかない。

空中写真判読では、田代原北側斜面の鞍部の前面に形成された崖錐堆積物付近をリニアメントが通るが表層には崩落した岩塊が堆積しているため、詳細調査の候補地としては不適と判断した。

田代原は、千々石断層の活動開始から現在までの堆積物が堆積していると推定されたことから、ボーリング調査を行い、地下の地質構成を検討することとした。ボーリング地点選定にあたっては、扇状地堆積物に覆われていない場所を選び、田代原東端部でボーリング調査を実施した。

深度−15mまでのボーリング調査の結果、地表から1.23mまでローム層および泥炭が堆積しており、その下位に複数の土石流堆積物が分布していることを確認した(図3−3−11:詳細は後述)。

沖積堆積物が1.23mしか堆積していなかったことから、田代原付近には、近い過去には継続的な湖沼等の環境は存在しなかったと考えられる。また、深度1.23mより上位には砂礫等は挟在されず、周囲の山体が崩れるような大規模なイベント(地震)はなかった可能性が高いと考えられる。