上部斜面と緩斜面の傾斜変換点付近には、尾根を切る東西方向の三角斜面が多数発達する。これらの地形は千々石断層の活動に関連した変位地形と考えられるが、個々の変位地形は直接連続せず、平行する短い東西系のリニアメントの集合となっている(図3−3−7)。
千々石町北部の断層崖に沿った町道建設に伴い、法面に千々石断層の露頭が出現した。露頭写真を図3−3−8−1に、露頭スケッチを図3−3−8−2に示す。
千々石断層の断層面は、走向方向に大きく波打っており、法面露頭の東部(スケッチのB)に断続的に出現している。この断層面には傾斜が90°に近い条線が認められる(図3−3−8−1、図3−3−8−2の右端の写真)。このことから、千々石断層の変位せいぶんには横ずれ成分はほとんどないと判断される。
露頭中央部には、中位扇状地T面構成層を変位させている小断層が見られる(スケッチの@)。断層の走向・傾斜はN77W、60Sで千々石断層の大局的な走向とやや斜交する。この断層は明褐色軽石質凝灰岩を変位させていると考えられる。断層を挟んだ上がり側と落ち側の軽石質凝灰岩の火山灰分析を実施したところ(CC2、CC3)、変質風化が激しく火山ガラスが風化しているものの、鉱物組成や重鉱物組成から同一の火山灰と推定される。したがって、この小断層の変位量は約4mと考えられる。
この小断層と上記の条線を有する断層との関係は露頭では確認できなかった。