長崎県によれば、原生沼は少なくとも深度−4mまで泥炭層が堆積している。放射性年代測定によれば、最下部の深度−385〜−380cmで6380±100yBP、−270〜−260cmで2770±80yBP、−130〜−120cmで625±55yBP、−85〜−80cmで300±75yBPである。この結果から得られた堆積速度は、下層から中層は0.032cm/yから0.065cm/yと西日本の山地湿原や池沼で見られる一般的な堆積速度に近いが、上層では0.139cm/yから0.283cm/yと異常に大きな値を示す。
同時に実施された花粉分析結果によれば、沼野植物の花粉が出現するのが1000〜500年前であり、上記の堆積速度変化からみると、1000年前以降にゆっくり堆積が進んでいた池から沼野の環境になり、500年前以降に植物遺体が急速に堆積したと考えられる。
原生沼は雲仙岳に近く、流出入する河川もない山間の池沼であることから、少なくとも6000年前以降の雲仙火山の降下火山灰が保存されている可能性が高い。