(5)雲仙地域のテクトニクス

雲仙地域は大局的にみると、「別府−島原地溝」(松本,1979など)の西端にあたり、重力基盤の落ち込みと鮮新世以後の活発な火山活動で特徴づけられている。

多田(1985)は、国土地理院による明治以降1世紀近くにわたる三角基準点の観測結果をもとに、九州の地殻歪・水平変位量分布をまとめ、これに基づいて沖縄トラフ北東端として別府・島原地溝を位置づけ、トラフの拡大によって南北方向の引張応力場が生じているとした(図3−1−17、左側の図)。

一方、佃(1993)は多田(1985)の解釈を排し、中央構造線の右横ずれによって九州北部の地殻変動を解釈した(3−1−17、右図)。このような中央構造線の右横ずれは、フィリピン海プレートの斜め沈み込みをその原因としている。