(4)コア試料の分析*6)

採取されたコア試料については、断層の隆起側・沈降側で対比面を確定し断層イベント層準を割り出すことを目的として、以下の項目で堆積物の分析を行った。

・帯磁率測定

・写真撮影

・目視観察

・粒度分析

・粗粒・細粒堆積物の鏡下観察

・放射性炭素年代測定

・火山灰分析

*6):試料分析のうち、放射性炭素年代測定は(株)地球科学研究所に依頼した。また、帯磁率測定、粒度分析、火山灰分析は高知大学松岡助教授へ依頼した。

試料分析の各項目の内容ついて以下に示す。

@ コアの基礎処理

試料の詰まったコアパイプは電動鋸により1m毎に切断し、油圧押し出し器により内部の資料を押し出す。この時、試料はステンレスワイヤーにより縦に二分割し、一方を分析用に使用し、他方は再現性の確認のための保存試料とした。

A 帯磁率測定

半裁したコアは直ちに帯磁率測定(Bartington Instruments社製測定器使用)を実施する。測定は2cmピッチで行った。

B 写真撮影と目視観察

半裁コアの切断面を霧吹きで洗浄した後、写真撮影を行い、目視による堆積物の観察を行った。この時、堆積物中に含まれるウニ殻、貝殻、木片等の化石を年代測定用サンプルとして採取した。

C 粒度分析

コア試料を5cm毎に切り出し、含水比を測定のした後、63μmおよび125μm)の篩により篩分けを行い、63〜125μm及び>125μmの残滓について各々計量を行った。この時>125μmについては塩化亜鉛溶液による木片等の除去と塩酸処理による貝殻等の除去の工程を加えた。

D 鏡下観察

上記処理を行った粗粒分を40倍の実体顕微鏡を用いて鏡下観察を行った。ここでは火山灰層の認定を主たる目的とし、火山灰層と特定された箇所については以下の火山灰分析を行った。

E 炭素14年代測定

断層の活動時期を特定する際の年代データを取得するため、コア試料の中から採取したウニ殻、貝殻、木片等のAMS−14C年代測定を実施した。

F 火山灰分析

粗粒分の鏡下観察により、認められた火山灰層について以下の火山灰分析を行う。分析は全岩鉱物組成、重鉱物組成、火山ガラスの形態分類、火山ガラスの屈折率測定の4項目を実施した。

処理の際の重液分離にはブロモホルムを用い比重2.8の重液を調整・使用した。また検鏡プレパラート作成時の試料の封入にはグリコールフタレートを用いた。以下に各分析手法の詳細を示す。

(イ)全岩鉱物組成

各試料の鉱物組成を顕微鏡の検鏡により同定する。鏡下で各粒子の鉱物種を石英、斜長石、ガラス、重鉱物に分類し、200粒以上カウントして百分率で示した。

(ロ)重鉱物組成

各試料の重鉱物組成を実体顕微鏡の検鏡により同定する。鏡下で各試料に含まれる重鉱物種を観察し、角閃石、斜方輝石、単斜輝石、黒雲母、ジルコン、燐灰石、不透明鉱物に分類し、200粒以上カウントして百分率で示した。

(ハ)火山ガラスの形態分類

試料に含まれている火山ガラスを形状によって分類する。分類は吉川(1976)に準じ、以下のように分けた。観察では200個以上を計数の上、百分率を求めた。

・偏平型火山ガラス(H):透明、平板状で突起が少ない平滑なガラス。平板状で突起の無いもの(Ha)と平板状の面に1〜3本の直線状・曲線状の突起があるもの(Hb)に区分できる。

・中間型火山ガラス(C):偏平型と多孔質型との中間的な性質のガラス。平板状の面に曲線状の突起が比較的多くあり、Hb型と以下で述べるTa型の中間的なもの(Ca)と平板状の面に直線状平行な突起を3本以上(以下に述べるTbよりも少ない)もつもの(Cb)の2種類存在する。

・多孔質型火山ガラス(T):透明で気泡を多く含み、非常に密に曲線状・直線状突起が存在するガラス。不規則な多角形で曲線状の突起が密にあるもの(Ta)と繊維状に直線状平行な突起が密にあるもの(Tb)の2種類存在する。

(ニ)火山ガラスの屈折率測定

火山ガラスの屈折率を古澤地質調査事務所製 温度変化型屈折率測定装置”TAITO”を用い、各試料25個以上を測定した。