2−2−1 千々石断層および周辺

地溝北部の断層群のうち、最も連続性がよく、地形的にも明瞭な断層である。この断層は、少なくとも断層の東部では、約1.9万年前とされている火砕流堆積物(礫石原火砕流堆積物)の堆積面を変位させておらず、半島東部の海岸付近の新しい地形面上にも、変位地形は読みとれない。また、断層の延長方向の海域にも新しい時代に活動した断層は確認されていない。一方、西方の唐比低地(橘湾の北縁)では、ボーリング調査によって完新世にも断層活動があったことが推定されている(松岡他、1990)。また、付近の海域でも新しい時代に活動した活断層が確認されている(松岡・岡村、2000)。

一方、千々石断層の南側に位置する九千部断層や普賢岳北断層は、約2万年前の妙見岳溶岩堆積面や低位扇状地面も変位させているようである。これらの点を考慮すると、地溝北部の南落ちの断層活動は、新しい時代には、千々石断層の西部とこの断層より南側の断層群で生じている可能性が高いと考えられる。

以上の検討をふまえ、これらの断層の調査では、以下の地域に調査の重点を置いた。

・唐比低地周辺、島原市街地:平野下に伏在している可能性のある断層(千々石断層の延長部)の探索のための既往ボーリング資料の収集とそれを用いた沖積層の構造解析を行った。

・千々石川流域の低地:断層が新しい地形面を横切る地域を中心に調査を行った。

・田代原低地:断層落ち側の低地に断層活動を記録した堆積物が存在する可能性を検討した。