反射法探査による、基盤上面の反射面のずれにより推定された那留断層の活動時期は、烏帽子岳火山噴出物堆積以降、中位段丘堆積物堆積以前である。この活動時期は、那留地点の詳細観察により存在が明らかになった断層の活動時期に矛盾しない。
那留地区で実施した反射法探査及びボーリング調査により、変位を受けていない最古の基準面は中位段丘堆積物の基底面である。一方、変位を受けていると考えられる最新の地層は烏帽子岳火山岩類の基底面である。
したがって、最新活動時期は中位段丘堆積物の堆積開始以前である。
本地域での、中位段丘堆積物の堆積年代は研究されていない。また、堆積物から年代測定試料も採取できなかった。一般に知られている中位段丘の開始時期12〜13万年を用いれば、最新活動時期は12〜13万年以前ということになる。
A再来間隔
変位を受けていると考えられる基準面が烏帽子岳火山岩類の基底面のみであるので、再来間隔を見積もることはできない。
B単位変位量(1回に活動に伴う変位量)
変位量は、中位段丘堆積物による浸食量が不明のため上限は明らかでないが、反射断面上では垂直成分で15mの変位を示しており、15m以上の垂直変位量があると考えられる。
単位変位量は、複数の基準面が得られていないので、見積もることはできない。
C平均変位速度
変位量は、中位段丘堆積物による浸食量が不明のため上限は明らかでないが、反射断面上では垂直成分で15mの変位を示しており、15m以上の垂直変位量があると考えられる。
中位段丘堆積物の堆積年代は得られていないが、一般に考えられている12〜13万年を用いて、平均変位速度を算出すると 0.13m/千年以上となりB級であると考えられる。A級となるためには、中位段丘堆積物による浸食量が100m程度必要となり現実的ではない。
いずれにせよ、中位段丘堆積以降活動していないため、起震断層になるとは考えられない。
D想定マグニチュード
変位地形・断層露頭が連続する区間は、北端を那留地区赤尾、南端を大間見とする約3kmである。
内陸性の地震断層においては、長さLや単位変位量Dと地震のマグニチュードMの関係が松田式(松田(1974))により以下のとおり知られている。
Log L = 0.6 M − 2.9 (Lの単位はkm)
Log D = 0.6 M − 4.0 (Dの単位はm)
この式に、L=3kmを代入すると、推定されるマグニチュードはM=5.6となる。
E長期予測
反射法断面では、中位段丘堆積物の基底面に変位は認められない。
したがって、中位段丘堆積物の堆積開始以降断層は変位していないと考えられる。
将来的に変位する可能性はない。