トレンチ北面のN6及び南面のS6付近では,新第三紀中新世の明戸層泥岩と第四紀完新世の礫層1が高角の断層で接する。断層部の詳細については次項以降で記述する。
上記2層を不整合に覆い,礫層2が分布する。トレンチ西端から中央には礫層2の上部に礫混じり砂層が分布するが,トレンチ東端では礫層2と指交関係にあり,尖滅する。礫層2の上位には腐植質砂礫層が分布し,礫層2を不整合に覆う。腐植質砂礫層の上位には礫混じり腐植質粘土層が分布する。
○地質構成
・新第三紀中新世 明戸層
本層は暗緑灰色を呈する泥岩からなり,細粒砂岩を伴う。層理面の走向・傾斜はN4゚W,58゚Wである。局所的に厚さ数cmの粘土が挟在するが,全体に破砕組織は微弱であり,原岩組織が保存されている。
・礫層1
黄褐色を呈する砂礫からなる。基質はシルト〜粘土質細粒砂からなり,淘汰不良である。礫は径2〜10cmの亜円礫を主体とする。礫種は花崗岩・安山岩・閃緑岩主体であり,砂岩,シルト岩,凝灰岩などを伴う。標尺N6の断層付近では,礫の長軸が断層面に沿って並んでおり,断層運動に伴う変形を被っているものと判断される。
・礫層2
本層は下位の明戸層,礫層1を不整合で覆う。
暗褐色を呈する砂礫主体であり,上部に礫混じり砂を伴う。
砂礫では,基質が極粗粒砂〜細礫からなり,淘汰が悪い。礫は平均径10〜20cmの亜円〜亜角礫主体であり,径40cmを超える巨礫が散在する。礫の長軸は,西に緩く傾斜するものがやや多い。一部の巨礫周辺には黒褐色の極細粒粘土が付着する。
礫混じり砂は主として淡褐色砂からなり,腐植質シルトを挟む。層厚は50〜100cmであり,東側では砂礫と指交関係にある。全体に東へ緩く傾斜するが,標尺N6及びS5付近を境として,その東側で傾斜がやや急になり,10゚程度の傾斜を示す。なお,標尺N14〜N18間では,本層中に異常傾斜や擾乱構造が認められる。
・腐植質砂礫層
黒褐色〜暗褐色を呈する砂礫からなる。基質は腐植質シルト〜砂からなる。礫は平均径10〜20cmの亜円〜角礫主体である。礫種は主に花崗岩・安山岩・泥岩である。特に,明戸層起源の泥岩角礫が全体の30〜40%を占め,下位の礫層よりもその比率が多い。礫の長軸配列は様々であり,堆積構造は不鮮明である。
図4−1−4 菅生田トレンチの概略スケッチ(S=1/100)