(2)前処理

都市部や道路沿いの測線においてはノイズとなる雑振動(自動車,工場などの振動)のためにデータ品質を低下させられることが多い。また,今回の調査では,対象深度が200〜300m程度であり,深部では信号も微弱になると考えられる。このため,波形の分解能を向上させたり繰り返しの波を除去しておかなければならない。したがって,CDP重合に先立って生記録に各種のフィルター処理を施しておく必要がある場合が多い。この一連の処理を前処理と呼ぶ。

・ゲインリカバリー

全体的にデータの振幅レベルのばらつきを補って反射信号を効率よく扱うために振幅調整を行った。

・デコンボリューション

ゲインリカバリー後に,データの分解能の向上とショット間での信号波形の特徴のばらつきを取り除くために,デコンボリューションをテストした。バイブレータ振源の場合,震源波形がゼロ位相となるためにデコンボリューションもゼロ位相型が用いられる場合もある。但し,生データに作用しているフィルター効果としては,震源波形以外に受振器特性などの測定系の効果や弾性波が伝搬していく過程での透過,吸収効果などもあり,これらがゼロ位相である保証は無い。また,リババレーション等の繰り替えし作用の除去には最小位相型の方が効果的である。そこでデコンボリューションとしては,通常適用される最小位相型のデコンボリューションを用いた。そして最小位相型で効果が見られない場合にゼロ位相型も試すこととした。

ショットギャザーやブルートスタックを見ると,ほぼ400ms程度までは反射イベントを認識できる。そこで,自己相関関数の計算ゲートとしてニア側で0〜1,000ms ,ファー側で0〜1,000msとした。この自己相関関数計算ゲートの長さを考慮してデコンボリューションフィルターのオペレータ長を50ms,100ms,150ms,250msに設定してテストを行った。テスト結果を図3−4−12に示す。

図3−4−11 静補正の適用例

図3−4−12 デコンボリューション(自己相関関数計算ゲート長比較テスト)

これを見るとデコンボリューションの適用によって分解能の向上や繰り返しの波の除去効果などが見られる。ただし,オペレータ長の違いによる差違は見あたらない。そこでオペレータ長を短い50msとして予測距離のテストを行った。これを図3−4−13 に示す。予測距離に関しては,5ms,10ms,15ms,20msの4ケースをテストした。これを見る限りでは予測距離を変えることによる反射イベントの連続性の向上などは見られなかった。また,予測距離を長くすると波形の分解能が若干落ちると思われる。そこで自己相関関数計算ゲート50ms,予測距離10msのパラメータを用いることとした。また,最小位相型で効果が見られたのでゼロ位相型はテストしないこととした。

図3−4−13 デコンボリューション(予測距離比較テスト)

・速度解析

速度解析(P波)は,定速度解析法やワークステーション上での会話型解析法等を組み合わせて約100m毎に実施した。図3−4−14 に会話型速度解析の例を示す。

図3−4−14 会話型速度解析例