(2)火山灰分析結果

本調査では,坪沼第二トレンチの腐植質粘土層中に分布する礫状の火山灰と,火山灰を含む腐植質粘土(基質部)について火山灰分析を行った(表4−1−3,巻末資料)。なお,14C法年代測定結果では,本試料の上位(T2E−12)で1,230±60 y.B.P,下位(T2E−11)で2,380±60y.B.Pの年代値が得られている。14C法年代測定結果と併せて,周辺地区の火山灰分布カタログを参考にすると,分析した火山灰は,年代値から十和田b(ca.2 ka)が,火山灰の分布範囲からは十和田aが対比される可能性がある。

分析結果では,火山灰中のガラスの形態,鉱物組成及び斜方輝石の屈折率(1.7056〜1.7092)については,町田・新井(1992)★12による十和田a,bの記載と調和するデータが得られた。但し,ガラスの屈折率は本試料の測定結果の方が,町田・新井(1992)★13による十和田a,bの記載値(1.496〜1.504,1.498〜1.501)より高い値が得られた。

腐植質粘土(基質部)中に含まれる火山灰について分析した結果では,礫状の火山灰に含まれない角閃石,カミングトン閃石,高温型石英及び低発泡火山ガラスが多く含まれることが明らかになった。このことから,礫状の火山灰とは異なる火山灰が基質中に混在しているものと推定される。分析で得られた鉱物組成及びガラスの屈折率などから判断して,基質中に混在する火山灰は,沼沢−沼沢湖テフラ(鈴木・早田,1994★13;5,000y.B.P)である可能性がある。

以上の火山灰分析結果を総合すると,分析した礫状の火山灰は十和田aまたは十和田bに対比される可能性があり,後者の場合には上・下位層の14C年代結果と調和すると言える。一方,本火山灰が十和田aに対比される場合には,上位層で得られた14C年代値が,再堆積した異地性腐植物の年代値を示している可能性がある。

★12 町田洋・新井房夫(1992):火山灰アトラス.[日本列島とその周辺].東京大学出版会,276p.

★13 鈴木毅彦・早田勉(1994):奥会津沼沢火山から約5万年前に噴出した沼沢−金山テフラ.第四紀研究,33,p233−242.

表4−1−2 14C年代測定結果一覧表

表4−1−3 火山灰分析結果一覧表