(1)14C年代測定結果

分析した27試料の内,22試料については観察結果に基づく層序関係と若干の誤差を考慮した年代値との関係が整合した。以下では層序関係と年代値が整合しない5試料について述べる。

@T2E−4(第二トレンチ東面:砂・礫・シルト層;AMS法,43,260±620 y.B.P)

試料は砂層中の材である。測定の結果,下位の腐植質シルト層1の上部(T2E−3)より古い年代値が得られ,層序と年代値が一致していない。なお,得られた年代値は下位の腐植質シルト層1と類似しており,分析試料は同層と同時代の材が再堆積または液状化により運ばれたものであると推定される。

AT2E−7B(第二トレンチ東面:腐植質シルト・砂互層;β線計数法,8,500±120 y.B.P)

試料は黒色を呈する腐植土であり,材片を含むが,分析に際しては材片を除去した。測定結果については,次の2点より,本試料の年代値が堆積年代を示さず,異地性腐植土の形成年代を示していると判断し,不採用とした。

・T2E−8より上位層だが,年代値は古く,層序と年代値の関係が一致しない。

・同一層準であるT2E−6BやT2E−8と比較して,約1,000〜1,800年古い年代値である。

BT2N−1(第二トレンチ北面:砂・シルト層1;AMS法,2,810±40 y.B.P)

試料は植物片を少量含むシルトであり,試料中の植物片について年代測定を行った。測定結果については,次の2点により,上位から混入した異物の年代値を示すと判断し,不採用とした。

・同一層準のT2W−1(約45,000年前)に較べて非常に新しい年代値である。

・上位層の年代値よりも新しく,層序と年代値の関係が一致しない。

CT2N−2(第二トレンチ北面:砂・シルト層1;AMS法,16,450±90 y.B.P)

採取試料は褐灰〜青灰色を呈する砂質シルト〜シルトであり,肉眼では腐植分が乏しい試料である。年代値は,AMS法により基質中の腐植分について測定したものである。測定結果については,次の2点に示す層序と年代値の不一致から,本試料の年代測定結果を不採用とした。

・同一層準のT2W−1(約45,000年前)に較べて非常に新しい年代値である。

・上位層(例えばT2E−3,4,5)の年代値よりも新しく,層序と年代値の関係が一致しない。

但し,本試料については腐植質シルト層2(A−5)と砂礫層2(B−1)の間の未区分層に対比される可能性も残されており,その場合には本年代値が堆積年代を示している可能性がある。

D B−5D(B−5孔ボーリングコア:GL−7.50m;AMS法,15,670±100 y.B.P)

試料は腐植分を含む砂層であり,基質中の腐植分についてAMS法により測定した。測定結果では,上位のB−5@〜Cよりも新しい年代値が得られ,層序と年代値の関係が一致せず年代値を不採用とした。但し,上位の4試料(B−5@〜C)が全て異地性の腐植土が再堆積したものであり,真の堆積年代を示していない場合には,本試料の年代値が現地性腐植土の堆積年代を示している可能性が残される。