調査地の地質は,下位より新第三紀中新世前期の槻木層,高舘層,中新世中期の茂庭層,安山岩第四紀完新世の低位段丘堆積物層,崖錐堆積層,地すべり堆積物層,小扇状地堆積物層及び沖積層からなる★6。
(1) 地形状況
調査地ではリニアメントの北西側に山地が分布し,山地頂部には標高250m前後の小起伏地が広がっている。リニアメントの南西側山地頂部にも小起伏地が分布するが,標高は150m前後であり,北西側山地頂部とは約100mの高度差を有している。
調査地中央には坪沼川が流れ,概ね北流している。同河川にはリニアメントにほぼ平行する支沢があり,これらの支沢と坪沼川との合流部周辺には,北東−南西に長い沖積低地が広がっている(写真4−1−1)。しかし,リニアメントより北方では,坪沼川は山地内にV字状の峡谷を形成しながら北流しており,流域の地形はリニアメントを境として大きく変化している。
上記沖積低地と山地との間には,崖錐堆積物からなる緩斜面及び平坦地が発達する。これらの崖錐堆積面の前縁(沖積低地側)には高さ4m前後の低崖が北東−南西方向に連続しており(写真4−1−2),一部は低断層崖である可能性がある★7。
★6本調査で使用した地層名は,平成7年度調査に従った。
★7本調査では,この低崖の一部を断層崖とみなして坪沼第一トレンチを掘削したが,断層は出現せず,
少なくともトレンチ地点の低崖は侵食崖であることが判明した。
写真4−1−1 坪沼川周辺の地形状況
山地と沖積低地との境界付近にリニアメントが判読される。
図4−1−2 坪沼断層に関する地表踏査(精査)結果図
写真4−1−2 崖錐堆積物層前縁の低崖地形
本調査では,写真中の高さ約4mの低崖を横切る坪沼第一トレンチを掘削したが,断層は存在せず,侵食崖であることが判明した。