5−2−3 活動履歴の考察

以上をまとめると,長町ー利府線の活動履歴は次のように考えられる。

(1)地震によって液状化したと判断される地層の乱れが,約7,300年前の腐植土層の下と,約2,500〜2,800年前の腐植土層の下に確認された。

このことより,液状化を起こすような大地震が,過去約7,300年前以降及び約2,500〜2,800年前以降の計2回発生したと考えられる。いずれも,上位の腐植土を島状に取り込むような地層の乱れを伴うことから,腐植土堆積後の早い時期に地震が発生した可能性が高い。

(2)仙台市南部でのいくつかの遺跡発掘調査によっても,約3,000年前前後に発生した可能性のある大地震による噴砂の跡などが確認されている(平野ほか,1994)。また,調査地付近の王ノ壇遺跡でも,約3,500年前の地層を引き裂く砂礫層の噴砂跡が確認されている。このような砂礫層の噴砂は,地震間隔の短い海溝型地震によるものであるなら,約3,500年前以降の地層中にも同様の噴砂跡が認められはずであるが,そのような痕跡は認められていない。したがって,遺跡発掘調査で確認された噴砂跡は,直下型地震による液状化によってもたらされた可能性があると考えられる。

(3)本調査で確認した約2,500〜2,800年前以降に発生したと考えられる地震による液状化の跡は,遺跡発掘調査で確認された噴砂の時期とほぼ一致し,同一の地震によるものである可能性が高い。

また,約7,300年前以降に発生したと考えられる地震による液状化跡は,約2,500〜2,800年前以降に発生したと考えられる地震によるものとほぼ同じ形態を示すことから,これらは同じ様な規模の地震によってもたらされた可能性があると考えられる。

(4)上記の2回の液状化現象が長町−利府線で発生した地震によるものであるなら,“再来周期”は約4,500〜5,000年で,最終イベントは約2,500〜2,800年前以降ということになる。