@青葉山段丘堆積物中に見られる堆積構造
No.1孔の38.80〜39.60m付近に,組織が乱れ砂層が注入したような堆積構造が見られたため,軟X線を照射して堆積構造を観察した。軟X線撮影写真とそのスケッチを図3−4−3−1、図3−4−3−2、図3−4−3−3、図3−4−3−4に示す。この軟X線撮影試料は,下位のNo.2試料と上位のNo.1試料の2つよりなるが,これらは一連のものである。
a.肉眼的観察結果
・No.1試料は全体的に砂質で,部分的に泥層の破片が混入している。葉理等の組織は乱れ,試料の下部から中央部にかけてジグザグ状に入り組んでいるように見える。有機物片も,No.2試料と比較すると全体に乱れており,明瞭な配列は見られない。試料の上部では,葉理等の組織がわずかに残存するように見えるが,それらをかいくぐって砂が細い流路状に分布している。
・No.2試料は塊状の泥層,砂層及び葉理が顕著な砂層からなる。試料の上部では葉理は乱れておらず,含まれる有機物も葉理と調和的に分布している。試料の中央部付近では砂層と泥層の境界部は乱れており,砂層が泥層の内部に入り込んでいる部分も見られる。
b.軟X線写真観察結果
本試料では,全体的に砂層は泥層よりも密度が高かった。また,組織の乱れた砂層より,葉理が顕著に見られる砂層の方が密度が高かった。有機物片は砂層や泥層より密度が低いために,写真では白色に写っている。
・No.1試料では,密度の高い部分と低い部分が混在している。葉理はS字を描いたように大きく乱れており,試料の上部では,砂がわずかに残存する葉理等の組織をかいくぐって噴出しているように見える。
・不明瞭であるが,No.1試料の中央部に,2点鎖線で示したようにやや密度の高い部分が残存している様に見える。そのまわりを密度の低い部分が取り巻いて上方に流れ込んでいる。
・No.2試料の試料上部では,葉理等の組織はあまり乱れていないが,試料下部では,泥層と砂層の境界が乱れて入り組んでいる。
以上の様に,組織の乱れ等がとくにNo.1試料で観察される。葉理の乱れは試料中部で著しく,試料上部では葉理等の組織をかいくぐって砂が噴出しているように見える。
A沖積層堆積物中に見られる堆積構造
No.1孔の6.20〜6.40m付近及びNo.2孔の5.00〜5.20m付近に,堆積構造の乱れた層が見られる。これらのボーリングコアスケッチ及び写真を図3−4−4−1、図3−4−4−2、図3−4−4−3、図3−4−4−4に示す。
これらは,図3−4−4−1に示すように腐植土を腐植質シルトが島状に取り込んだり,図3−4−4−3に示すように粒径の揃った細砂が粘土中に注入したりしている。このような乱れた堆積構造が形成された時期は,14C年代測定結果により7,270年前から8,970年前の間であると考えられる。
Bまとめ
乱れて堆積した地層は,洪水などで泥流が越流してきて堆積したもの,あるいは地震などの振動で地層が乱れて堆積したものなどが考えられる。越流によるものの場合は,多くの場合異質な物質が混入している。しかし,今回のボーリングで見られたものは,同質な近傍の地層がかき乱された様相を呈しているため,地震などの振動で形成された可能性がある。このような構造を形成した地震が,長町−利府線を震源とするものであるという可能性も考えられる。