(2)反射法データ処理

極浅層反射法探査データ処理は,図3−2−7に示すフローチャート沿って実施した。なお図中の数字はそれぞれの処理詳細の説明番号に対応している。なお各パラメータは表3−2−6に示す。以下にデータ処理に使用したハードウェアおよびソフトウェアを示す。

ハードウェア

スーパーコンピューティングサーバ:Power Challenge(シリコングラフィックス社)

ワークステーション :SPARC Station IPX(サンマイクロシステム社)

プロッター :4036(富士ゼロックス社)

ソフトウェア

データ処理ソフト :DISCO(CSD社)

:FOCUS(CSD社)

@ 屈曲測線前処理

発振点,受振点の位置を入力し,各CDPにおける発振点・受振点の組み合わせを定義した後,参照ラインの設定,データ処理に使用する反射点の範囲を設定した。

A 波形の整形

受振点毎にばらつきがある波形振幅を調整した。このとき受振器の感度不良やノイズが大きいデータは削除した。

B ノイズ除去

信号に含まれる高周波及び低周波のノイズをバンドパスフィルターを用いて除去した。さらに,地層のフィルター効果により低周波化した反射波形を,ディコンボリューションフィルターを用いて高周波化した。ディコンボリューションテストは図3−2−8に示す。

C 共通反射点編集

各発振点毎に揃っているデータをCDP重合するために,共通の「ビン」毎のデータに編集した。

D 地形および表土による影響の補正

発振点と受振点の標高差や地表付近の弾性波速度のばらつきの影響による反射信号の伝播時間のばらつきを補正するために,タイムターム法を用いて,表層の層厚と弾性波速度値を求めて補正値とした。

E 速度解析

共通「ビン」上で集められたデータは,波線の長さにより反射波の到達時間が異なっているが,これを震源直下で反射してきたと仮定して補正することにより,反射波を同一時間上に並べることができる。このとき反射波毎に弾性波速度値を細かく変えながら適切な補正値を求めるのが速度解析である。L1測線では5地点,L2測線では4地点でそれぞれ速度解析を行った。なお,速度解析結果は表3−2−7−1表3−2−7−2に示す。

F 波線の長短による反射波の時間補正

反射波の到達時間には,実際の伝播経路の違いにより若干の時間ずれが生じるので,残差静補正により時間補正を行った。

G 動補正と波形ひずみ除去

速度解析により得られた補正値を用いて,各深度の反射波を動補正(NMO補正)によって時間的に揃えた。動補正では深度が浅く距離が遠い波形ほど補正量が大きくなる。その結果,反射波形のひずみが大きくなり反射断面に悪影響を及ぼすので,この部分をミュートを用いて削除した。

H 重合

時間的に揃えられた反射波データを足しあわせて1個のデータとした。このデータは各反射点での波形データとなる。

I 波形の整形

波は地中深くまで伝播して反射して戻ると低周波化するので,反射断面表示に適切な時間変化型バンドパスフィルターを用いて,主要反射面を強調した反射断面を作成した。

J 重合時間断面図

地表面からの往復走時で表示されている反射断面図。

K 真の反射波線補正

地表の発振点直下で反射したように処理されている重合断面を波線理論に基づいてマイグレーション処理を行って真の反射方向に補正した。

L 反射時間断面図

マイグレーション後の反射断面図。地表面からの往復走時で表示されている。

M 時間−深度変換

反射断面を多層構造に分類し,各地層の弾性波速度値を用いて往復時間で表示されている反射断面を地表からの深度に変換した。測線上の地層のS波速度は現地測定時のモニター記録を利用して求めた。L1測線は反射 波群がほぼ水平であった0〜100m区間及び,斜面側で測線がほぼ直線的であった160〜240m区間で,L2測線は全区間で屈折法解析を適用した。L1測線の100〜160m間は内挿した。なお,図3−2−9にL1測線,図3−2−10にL2測線の地層速度決定に使用したモニター記録を示す。各測線のS波速度値(Vn)及び層厚(Zn)を以下に示す。なお,各測線のS波速度は反射面構造に沿って適用した。

L1測線(0〜100m) V1=100m/秒 Z1=5m

V2=210m/秒 Z2=10m

V3=500m/秒

(160〜230m) V1=180m/秒 Z1=1〜4m

V2=410m/秒 Z2=3〜8m

V3=640m/秒

L2測線 V1=100m/秒 Z1=1〜3m

V2=270m/秒 Z2=10〜23m

V3=600m/秒

N 深度断面図

反射断面を深度変換して標高で表示した反射断面図。