(3)変位量と平均変位速度

大槻ほか(1977)は坪沼−円田断層帯付近一体にみられ高位浸食平坦面を基準として、坪沼−円田断層の垂直変位量を50〜75m、中新世末期の凝灰岩を基準として165mと見積もり、高位浸食平坦面の年代を20万年と仮定して平均垂直変位速度を0.3〜0.4m/千年と概算した。

 今回の調査においては、高舘層を覆う茂庭層基底の分布高度から垂直変位量を求めた。坪沼断層に関しては南西部の根添付近で170mと大きく、北東部の中沢付近で90mに減少している。円田断層の垂直変位量は南西部の足立付近で170mと大きく、北東部の菅生付近では70mに減少する。

 根添では、高舘層が崖錐性堆積物の上に3m以上衝上する坪沼断層本体を初めて発見した。崖錘堆積物の炭素同位体年代は約13,700年であり、平均変位速度は0.2m/千年以上となった。