長町−利府線の仙台市街地付近での平均変位速度に関しては、中田ほか(1976)の0.5m/千年以上、あるいは活断層研究会(1991)の0.5〜0.7m/千年と基本的には変わらない。ただし、今回の調査によって、仙台市街地内であっても、総垂直変位量が北東に向かって減少していることが判明したので、上記の変位速度も多少変更しなければならないが、その詳細を検討するデータは得られていない。長町−利府線がどこでも約45万年前に活動を開始した(中田ほか、1976)と仮定したとき、最も活動度の高い大年寺山付近の平均垂直変位速度は0.55m/千年(総変位量250m/45万年)、反射法地震探査測線Line−1(新寺小路)で0.35m/千年、Line−2(岩切付近)で約0.1m/千年、利府町春日付近で0.2m/千年ということになる。
なお、上記の変位速度は地下浅部(反射法地震探査測線Line−1では約400m以浅)では撓曲によるもので、地下深部に向かうにつれて断層による変位が大きくなるものと判断される。地殻歪エネルギーのほとんどは第三紀層以深の地殻本体に蓄えられるので、地表の変形が撓曲であるからといって起震断層としての評価を低く見積もることが誤りであることを付記しておく。
大年寺山断層と鹿落坂断層については、従来の結果(中田ほか、1976)を変更する知見は得られていず、平均垂直変位速度はそれぞれ0.1m/千年と0.03m/千年である。