(1)LINE−1(図2−11)
反射断面から、大年寺、向山、竜の口・亀岡、綱木、旗立、茂庭、高舘の各層の分布・堆積状況を解析した。竜の口・亀岡層下面(綱木層上面)、綱木層下面(旗立層上面)、高舘層上面に相当する反射面は比較的連続性も良く、測線全体に反射面の追跡が可能である。しかし、受振点220付近で反射面がやや不明瞭になり、その東側で大きく下方に撓曲し、竜の口・亀岡層下面(綱木層上面)、綱木層下面(旗立層上面)の比高差は約150〜200mに達する。受振点220付近の反射面の連続性が不明瞭な部分は、地質情報では東傾斜の大年寺山断層の分布する位置に相当しており、同断層を反映しているものと考えられる。また、撓曲の最も大きい受振点280〜300付近が長町−利府線に相当するものと考えられる。
反射断面に地質情報を考慮して検討すると、大年寺層、向山層は受振点310付近(新寺小路)から東側に30〜70mの層厚で分布し、竜の口・亀岡層は大年寺山断層部と判断される受振点220付近を境界に西側では層厚100〜150m、東側では層厚30〜100m程度となっている。綱木層、旗立層は、旗立層が受振点440付近から東側で欠如するものの、層厚100〜200m程度とほぼ測線全体にわたり厚く分布している。茂庭層は測線西側で層厚が厚くなるが、受振点320付近より東側では層厚を急に減じ尖滅している。追跡できる最深の東上がりの反射面は、高館層の上面に相当すると判断され、受振点40付近で標高−730m程度、大年寺山断層部東側に相当する受振点240〜520で標高−350m〜−460m程度に分布する。なお、高館層のP波速度は、屈折波解析から4.7km/sec程度と推定された。
長町−利府線は旗立層相当層以上で少なくとも向山層を含む地層が南東にかなり急傾斜する大きな撓曲構造として現れている。しかし、長町−利府線は新寺小路(受振点220〜280付近)の反射面の状況等から茂庭層以下の地層部では断層化しているとみれる。つまり、茂庭層以深では、西傾斜の逆断層となっている可能性がある。したがって、長町−利府線の垂直変位量は綱木層の上限面で約160mと見積もられる。 反射断面から判断される大年寺山断層は大年寺層相当まで切り、その変位量は数10m〜100mと見積もられる。
(2)LINE2(図2−12)
LINE1、 LINE3に比べると反射面の連続性が良くない。とくに受振点100〜300m付近では重合数が18〜30重合と比較的高いのにかかわらず反射面の連続性が良くない。これは地層の連続性・岩質、断層の発達状況あるいは測定環境上の違いなど種々の可能性が考えられるが、今後ともその原因について検討する必要が考えられる。
周辺の地質状況から本測線付近では、上位より下位に向かって七北田層上部、七北田層下部、番ヶ森山層、幡谷層、塩釜層が分布すると考えられる。このような地質情報に基づいて反射面を検討した結果、番ヶ森山層以上の地層は、緩く東側に傾斜し、測線中央付近で緩く撓曲した構造が見出される。幡谷層以深では、測線中央付近で区間速度が周辺より速くなる傾向があり、その付近で西傾斜の逆断層の可能性が考えられる。長町−利府線はこの逆断層部と一致し、その上部は緩く撓曲していると解され、基本的にはLINE1断面と似たような構造をなしていると考えられる。各層の層厚は測線終点(東側)で七北田層上部、七北田層下部が各々60m程度、番ヶ森山層が90m程度、幡谷層が200m程度と推定される。
(3)LINE3(図2−13)
周辺とくに名取側河床の連続露頭の地質情報を基に反射面を解析した結果、大年寺層から高館層までの各層の地下深部の地質構造が把握できた。反射面は連続性が良く、測線全体に反射面の追跡が可能である。
本反射断面の反射面は全体的に東側に傾斜しており、受振点30〜220付近の西側では反射面の傾向が急となるが、その東側では比較的緩くなっている。周辺の地質状況から新第三紀中新世の旗立層、綱木層相当層が示す地質構造を反映していると考えられる。上記受振点西側では傾斜角のきついところで約45゜となっている。上記受振点西側で区間速度分布も反射面の傾斜と一致した状況を示し、速い速度値を示す区間が深部から浅部へと上がってきている。これは旗立層、高館層相当層の分布示すものと考えられる。
さらに、旗立層、綱木層相当層の上位に緩く傾斜した鮮新世の亀岡層、竜の口層、向山層及び大年寺山層相当層が不整合に被覆する状況が反射断面上に鮮明に読みとられる。このようにしてみると、LINE3では各層は(少なくとも茂庭層以浅の地層)は全体として大きな撓曲構造をなしているが、反射面つまり地層は連続しており、この範囲では断層の存在は認め難い