(1)地質・地質構造の概要

調査地内の地質図を付図1、地質断面図を図2−5−1図2−5−2図2−6−1図2−6−2図2−7−1図2−7−2図2−8図2−9−1図2−9−2に示す。また、層序対比表を表2−2に示す。以下に地質・地質構造の概要について記述する。

1)北部地域

 この地域では三畳紀の利府層とこれを貫く花崗岩を基盤とし、新第三紀中新世及び鮮新世の地層がこれを不整合に覆って分布している。利府層は県道に沿って利府町森郷から放森にかけて分布している。花崗岩は利府町春日付近にごく小規模にみられるにすぎない。中新世の地層は、中新世前期に相当する松島湾層群と中新世中期〜後期に相当する志田層群に大別される。松島湾層群は塩釜層・佐浦町層など安山岩質火砕岩を主体とした地層からなり、県道以南の塩釜丘陵に広く分布している。志田層群は幡谷層(入菅谷層)、番ヶ森山層(青麻層)及び七北田層など海成の砂岩を主体とした地層からなっており、県道以北の富谷丘陵に広く分布している。鮮新世の地層は亀岡層とよばれ、汽水成のル−ズな砂岩やシルト岩からなり、県道に沿う低地帯に点々と分布している。

 この地域では、県道以北の富谷丘陵において、北東−南西方向の軸をもつ褶曲構造が認められ、北側から南側に向かって番ヶ森山背斜、放森向斜、春日背斜が配列している(春日背斜は今回の調査での仮称)。番ヶ森山背斜は、県民の森から惣ノ関ため池上流を通り番ヶ森山付近まで追跡できるが、番ヶ森山以北では不明瞭になっている。放森向斜は番ヶ森山背斜の南側に位置し、利府町菅谷から惣ノ関ため池付近を通り放森に至る。放森向斜の南端は菅谷付近で、北端は放森付近でそれぞれ不明瞭になっている。春日背斜は、利府町春日から瓦焼場を通り大日向付近に至る。

 番ヶ森山背斜は頂部が幅広く、北西翼部の地層の傾斜は概ね10゜以下、南東翼部で20〜30゜の傾斜となっている。春日背斜は、北西翼部で20〜30゜の傾斜、南東翼部で急傾斜となっており、全体的に非対称な構造を示している。両背斜の間の放森向斜は、両翼の傾斜が20゜程度の対称的な構造を示している。春日背斜の東翼の急傾斜帯に沿って長町−利府断層の存在が推定されている。

2)中部地域

 この地域の地質は、中新世前期に相当する高舘層、中新世中期に相当する茂庭層及び旗立層、中新世後期に相当する綱木層、梨野層、三滝層及び鮮新世の地層よりなる。高舘層と茂庭層の間、綱木層と梨野層の間及び中新世と鮮新世の地層の間は不整合関係にある。また、梨野層と三滝層は指交関係にある。

 高舘層は主として火山噴出物よりなる。茂庭層は粗粒砂岩・礫岩を主体とし、旗立層は細粒砂岩とシルト岩を主体とする。綱木層は火山礫凝灰岩・軽石凝灰岩と砂岩との互層よりなる。梨野層は陸成・湖成の含礫軽石凝灰岩を主体とし、 三滝層は玄武岩溶岩及び同質の火砕岩類を主体とする。

 鮮新世の地層は、陸成の亀岡層に海成の竜の口層(砂岩・凝灰岩が主体)が整合に重なり、これらを陸成の向山層(礫岩・砂岩・凝灰岩を主体とし、中部に厚さ10mの広瀬川凝灰岩部層をはさむ)が不整合に覆う。向山層の上位を、海成層の大年寺層(砂岩・泥岩が主体)が覆う。

 この地域の地層は、仙台市街地を取り巻くように市街地に向かって傾斜しており、市街地の北側と西側では10゜未満の傾斜を示している。市街地北側の鶴ヶ谷付近では、番ヶ森山背斜の南方延長部が南西に緩く軸傾斜し、緩やかな半ドーム状の構造を呈している。また、市街地の南西側の鈎取−奥武士線周辺では、北東に急傾斜した撓曲構造を示している。一方市街地中心部では、地層は水平に近い傾斜を示すが、段丘、丘陵と宮城野原平野との境界付近では撓曲し、かなりの急傾斜(大年寺山付近では鮮新統が45゜程度)を示している。この撓曲帯に沿って、長町−利府断層の存在が推定されている。長町−利府線がその南西部で鈎取−奥武士線と接する鈎取付近では、鮮新世の地層は小背斜・小向斜を形成している。

3)南部地域

 この地域の地質は、中新世前期に相当する槻木層、高舘層、中新世中期に相当する茂庭層及び滑沢層、中新世後期に相当する桜内層、北山火砕岩部層、小沢層及び鮮新世の地層よりなる。槻木層と高舘層の間、高舘層と茂庭層の間及び中新世と鮮新世の地層の間は不整合関係にある。また、桜内層と北山火砕岩部層は指交関係にある。

 槻木層はほとんどが陸成層で、凝灰岩、砂岩及びシルト岩よりなり、高舘層は主として玄武岩・安山岩溶岩と同質の火砕岩類よりなる。茂庭層は砂岩・礫岩を主体とし、滑沢層はシルト岩を主体とする。桜内層は砂岩・シルト岩・凝灰岩の互層より、北山火砕岩部層は凝灰岩と凝灰角礫岩より、小沢層は軽石質凝灰岩よりなる。鮮新世の地層は、軽石凝灰岩主体の沼田層、陸成の音無層及び薄木層よりなる。

 この地域の地層の傾斜は5〜15゜程度で、全体として緩やかに北西方向に傾斜している。大八山共同牧場が位置する北西側丘陵の南東側では、地層は南東方向に急傾斜(坪沼で60゜)しており、この急傾斜帯に沿って坪沼断層の存在が確認されている。