1−2−4 調査項目及び調査方法

実施した調査項目を以下に示す。

(1)文献・資料調査

 長町−利府断層帯の既往調査研究成果を整理・検討して、主要起震断層に関する未解決の問題点を抽出し、以降に行う各種調査の基礎資料とするため、調査対象地域における地形・地質及び地震に関する既往の文献、資料及び地質図等を収集、整理、解析した。収集したすべての文献については著者順に文献リストを作成した。また、主要な文献については、その概要等を報告書中で記述した。

 なお、本調査に用いる資料については、長町−利府断層帯を横断して施工された仙台市営地下鉄の資料や構造物基礎調査報告書等も可能な限り収集し、整理・解析を行った。

(2)空中写真判読

 空中写真判読では、活断層を示すリニアメント及び変位地形を抽出するとともに、変位基準となる段丘面・地形面の抽出・区分を行った。さらに必要に応じて地すべり・崩壊地形等を抽出し、変位地形との識別を行った。それらの判読成果をまとめて、縮尺1/25,000の地形区分図を作成し、現地調査により確認・修正を行った。

 なお、空中写真は、米軍撮影の縮尺1/10,000の空中写真(1947年撮影)、国士地理院発行の縮尺1/10,000の空中写真(1961年撮影)及び縮尺1/20,000の空中写真(1964年撮影)を使用し、仙台市街地等の人工改変による地形変化状況を考慮して判読を行った。

(3)現地踏査

 上記(1)、(2)の調査によって抽出された問題となるリニアメント・変位地形等の解明及びデ−タの補完を目的として現地調査を行った。現地調査では、地形・地質に関して以下のような調査を行った。

 地形については、空中写真判読によって抽出された地形面・段丘面区分及び変位地形等を現地で確認し、地形情報の精度を上げ、より精度の高い地形区分図を作成した。

 地質については、地質の分布伏況、地質構造及び露頭の有無についての調査、確認を行い、縮尺1/25,000の地質図を作成した。とくに本調査での主目的である第四紀後期の活動性を明らかにするために、段丘堆積物及びそれと断層との関係等に重点をおいて踏査を行った。断層露頭などの重要露頭が存在した場合には、詳細な地質観察を行うとともに、写真撮影を行い、必要に応じてスケッチ図を作成した。また、断層の活動性の評価を行うために、地層の年代測定に有効な試料(例えば14C試料)が認められた場合には、これを採取して分析・測定を行った。これらの調査結果を総合し、変動地形判断の根拠となった観察事項、露頭情報・年代等を盛り込んだ縮尺1/25,000の活断層詳細図(ストリップマップ)を作成した。

(4)物理探査

 反射法探査により、地下深部の地質構造を探査し、断層の性状を把握した。本探査の探査法及びその探査結果については、別冊の「物理探査編」で詳細に記述する。

(5)総合解析

 長町−利府断層帯の位置、規模等について総合的に検討を行うため、以上により得られた地形・地質調査結果及び物理探査結果をもとに総合解析を行った。また、次年度調査の主目的である断層の活動履歴および詳細位置特定のための調査計画についても検討を行なった。総合解析については、別冊の「総合解析編」にその内容を示す。