鉛直変位量については、平成7年度の変位量と本調査の変位量は概ね同じ程度の値となっているが、若干の差が生じている箇所もある。それに対しては、以下の理由が挙げられる。
@今回調査では、圃場整備による人工改変前の、より自然に近い地形を計測できた。
A今回調査では、測線を比較的長く設定できたため、比較すべき地形面の認定にあたって、断層付近の局所的な起伏の影響を少なくすることが容易であった。
調査結果から、近傍にあるL面とM面とを比較すると、明らかにM面のほうが累積変位量が大きいので、変位の累積性があることは確実である。したがって、本断層帯が第四紀後期において繰り返し活動してきたことは明らかである。つぎに、表3−5より、M面の平均変位速度の大きさの断層沿いの分布を見ると、断層の端部では小さいが、中央部では大きく、おおむね0.2〜0.3 m/千年である。L面の変位量は青川、田光で測定されているが、田光では複数の断層が併走すると考えられ、断層帯としての変位量をどう見積もるかについては、さらに検討の余地がある。
表3−5 断層沿いの各地点における平均変位速度一覧