トレンチ内に出現した地層は、上位から以下のとおりである。
a 水田耕作土、盛土(茶褐色、木片等を多数含む)
b ピート、有機質シルトを含む細礫層(a〜c間の薄い挟み層)
c 砂層(青灰色、シルト分を含む)
d 砂層(青灰色、粒径不揃い)
e 礫層(上部は灰色、下部は褐色、礫径はφ200 mm以下)
To 東海層群(砂岩、礫岩の互層)
これらの地層のうち、d層の下部以下の地層、およびb層とa層は上盤側にも下盤側にも分布するが、c層は下盤側にのみ分布する。壁面スケッチ図・写真を図2−4、図2−5に示す。また、各地層から採取した試料の14C年代値は表2−1のとおりである。
表2−1 青川上トレンチ年代試料測定結果
断層はトレンチの南北の壁面に認められる。断層面は明瞭で、傾斜は東傾斜60°以上と高角である。この断層は、基盤である東海層群To層をせん断し、L1段丘構成層であるe層、d層を変形させており、d層中部、e層の一部では剪断構造が認められる。また下盤側のd層上部は、断層際で著しく変形している。c層は下盤側のみに分布しており、断層面と接する部分は、剪断もしくは著しく変形した痕跡は認められないので、断層によって変位したといえる直接的な証拠はない。b層は上盤側でd層上部を侵食し不整合で覆い、下盤側ではc層を整合的に覆っており、断層による変位は認められない。
この地点における最新活動の時期は、地層の変位、変形の状況から、d層上部堆積後、b層堆積前と判断できる。d層の年代値は9630±40 y BP、b層の年代値は1540±40 y BPが得られている。よって最新活動時期は、補正年代で9630±40〜1540±40 y BPであり、較正年代(表1−7を参照)を考慮すると、約11000年前〜約1500年前の間と考えられる。
トレンチから観察される鉛直変位量は、To層上面で約1.1m、d層下面で約0.9 mとなる。それぞれの変位量の間には変位の累積性は明瞭に認められないが、変位している地層とそれを不整合に覆う地層の年代の間が約1万年と離れているため、この変位が断層活動1回分であるかどうかは判断できない。
図2−1 青川上地区調査位置図(S=1:2,500)
図2−2 航測図化地形断面測量結果−青川上地区
図2−3 地質断面図―青川上地区
図2−4 青川上トレンチスケッチ図
図2−5 青川上トレンチ写真