1−2−3 年代試料測定調査の概要

各地点のトレンチ壁面から採取した年代試料を、炭素同位体年代測定法で測定した。測定作業は樺n球科学研究所に依頼し、計測方法は試料の採取量に応じてAMS加速器質量分析法またはβ線計数法を選択した。較正年代(calibrated age)については、年代既知の樹木年輪の14C測定、サンゴのU−Th年代と14C年代とを比較し、最新のデータベース(”INTCAL98 Radio−carbon Age Calibration"Stuiver et al, 1998, Radiocarbon 40 (3))により約19000 y BPまでの換算を行って作成した補正曲線を用いた。測定結果を表1−7−1表1−7−2に示す。

年代試料の測定結果は、地層の年代を示していないと考えられる明らかな異常値が含まれていたり、同一層準中の年代値にもある程度のばらつきが生じることが普通である。したがって、採取した試料の年代値に基づいて地層の形成年代を推定するためには、何らかの判断を行う必要がある。本調査では、各試料の年代測定結果から地層の形成年代を推定するにあたって、表1−6のような原則に従うことにした。

表1−6 試料の年代測定値から地層の年代値を判定するための原則

また、調査地点によっては、平成13年度のボーリングコアから採取した試料による年代値がすでにある場合があるが、本調査で層準の年代値を定めるにあたっては、本年度実施トレンチの試料からの年代値を使用することを原則とした。これはトレンチ内の方が、試料を採取した位置と地層の状況が精密にわかるという理由によるものである。

それぞれの測定結果は、U章各論中のトレンチ調査結果の概要、およびV章の総合解析で解説した。

なお、本文中および図表中で特に注釈が無い場合、年代値は較正前の補正14C年代値(Conventional 14C age)を表示する。

※年代値の用語について

@14C補正年代(Conventional 14C age)

13Cによる同位体分別効果を考慮して補正した14C年代値のことを14C補正年代という。「試料中に安定同位体13Cが多く含まれていれば14Cも多く含まれている」という原理を利用し、試料中の13Cの量から基の14Cの量を補正するものである。既存の測定結果と比較できるように14Cの半減期を5568年(現在では5730年が正しいとされる)、過去の大気中の14C濃度を一定と仮定した場合の測定値である。

A較正年代(calibrated result、またはcalibrated age)

樹木の年輪など年代が既知な試料を数多く年代測定することによって、14C補正年代の測定値(14C濃度)と暦年代を両軸とした較正曲線(下図のグラフ)が作成されている。この結果を利用して測定値を実際の暦年代にあてはめた年代値を較正年代という。前述の14C補正年代値とは異なり、半減期の問題や大気中の14C濃度の変動が考慮された年代値となる。精度の高い較正が適用できる年代はおよそBC8000年以降である。暦年補正と表現される場合もあるが、本来の意味としては「較正」と表現するのが正しいとされる。

図1−4 較正年代の概念図

表1−7−1 年代試料測定結果一覧

表1−7−2 年代試料測定結果一覧

※測定方法

AMS:加速器質量分析  β:β線計数法  長:長時間測定