鈴鹿東縁断層帯は、本県の人口が最も集中する北勢地域に存在する。県内に存在する基盤的調査観測対象断層の中で最も断層長が長く、本県の防災対策上きわめて重要度が高い断層帯であることから、本県は、平成7年度に地震調査研究交付金を受けて調査を実施した(三重県、1996)。
地震調査委員会(2000)は、三重県(1996)の調査結果をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて、鈴鹿東縁断層帯の諸性質を以下のように評価した。
・最新活動時期:2万年前以降であるが、これまでの調査研究成果からそれ以上特定することは困難であり、それ以前の活動についても不明。
・断層活動1回の変位量:三重県(1996)が宇賀川地区で実施したトレンチ調査の成果から1.2m以上。
・平均活動間隔:同変位量及び同地区付近での平均変位速度から大まかな推定値として6千年以上。
・断層長:これまでの調査研究成果の値をすべて包含する34〜47q。
・活動区間および想定される地震の規模:最大の見積もりとして断層帯全体で1区間であるとした上で、将来の活動について、活動時の地震規模は、断層帯全体が1区間として活動する場合でマグニチュード7.5程度であり、変位量は3〜5m程度。
・今後一定期間の地震発生確率(将来の地震発生の可能性):最新活動時期を十分特定できていないため判断できない。
本調査は、「鈴鹿東縁断層帯の評価」において、今後に向けての課題として示された「鈴鹿東縁断層帯の断層地形や地質構造については比較的多くの調査研究成果があるが、@最新活動時期、A1回の活動における断層のずれの量、B活動間隔、C活動区間など活動履歴に関する精度よい成果は不足している。今後、最新活動時期を特定することが最も重要である。また、低角逆断層である前縁断層のずれの量を的確に見積もることも重要である。さらに、D南方延長上にある布引山地東縁断層帯の活動との関係も併せて検討する必要がある。」を踏まえ、同断層帯の活動履歴に関する精度のよい成果を取得することにより、今後の地域の防災体制の確立のために実施する。
平成13年度は、これまでの調査研究成果からは特定が困難とされている鈴鹿東縁断層帯の2万年前以降の活動履歴を解明するための基礎調査として、航測図化、空中写真判読、ピット調査及びボーリング調査を行い、活動履歴調査実施の可能性について検討した。その結果、5地点(宇賀川地区、宇賀川南地区その2、田光地区の3地点優先、および青川上地区、杉谷地区の2地点)がトレンチ調査候補地点の適地として選定された。
平成14年度は、前年度の調査結果を踏まえ、鈴鹿東縁断層帯の最新活動時期等について解明するための活動履歴調査を実施した。
そして、以上の調査及び前年度までの調査から得られた結果に基づき、鈴鹿東縁断層帯の地震規模の予測を行うとともに、長期的な地震発生の可能性等について総合的な評価を行った。