2−2−3 ボーリング調査−宇賀川地区(大安町石榑南)

調査位置を図2−2−2に、断面を図3−1−2に示す。

宇賀川地区は、平成7年度の調査でトレンチ調査およびボーリング調査を実施し、断層活動の時期をAD1020〜1410年の範囲で活動したと結論づけた地点である。今回の調査地点は平成7年度の調査地点の北側10数mに位置する。平成7年度の調査地点はその後建設された道路の下に埋もれていると見られる。

この地区の地形面は沖積面であり、地表面は圃場整備により少々改変されている。なお、調査対象地点では耕作はされていない。ここではピット掘削に続き、最終的には断層が想定される位置を挟んで5本の群列状ボーリング(UGB−6、UGB−7、UGB−10、UGB−11、UGB−12)を実施した。

その結果、この地区における基盤である東海層群が、西側のボーリングでは沖積層の下位に浅く、東側のボーリングでは礫層*の下位にやや深く観察された。

沖積層は全体的に中〜粗砂が主体で、部分的にチャート礫を含む。地層は概ね水平と思われ、ピットに連続すると見られるピート層を数枚挟み。また、部分的に細砂も挟む。

礫層は、UGB−11以東のボーリングで観察され、硬質な古い堆積岩や花崗閃緑岩の玉石を多く含む。礫は概ねφ5〜150mmで、大きいものはφ150mm程度のものも見られる。

東海層群は、上盤に当たる西側ではシルト岩、砂岩が優勢である。シルト岩は比較的均質で、粘性を持つ。部分的に層厚数10cmの砂層を挟む。一部でシルト岩中でラミナが観察され、傾斜は0〜10°程度である。砂岩はφ30mm以下、15〜10mm主体の円礫を含み、部分的に集中している箇所が存在する。ボーリング柱状図での東海層群の対比は困難である。また、東海層群中には、鏡肌を持つせん断面と見られる不連続面が数カ所見られる(UGB−6,7,10)。せん断面の傾斜は46〜65°と高角である。ただし、いずれも破砕帯を伴わず、繰り返し活動した断層とは考えにくい。

ボーリング結果から、東海層群の上面は、道路東端付近から東側に高さ3m程度の崖を形成していると考えられる。崖付近で実施したUGB−11では、深度2.97〜4.7m間が緩く傾斜し、東海層群相当の固結したシルト岩、砂岩であるが、4.7〜5.28mは未固結砂礫層である。5.28〜5.7m間はブロック状の乱れたシルト岩と砂礫が混在し、さらに、これ以下は再び固結した砂岩(東海層群相当)となる。これらの点から、UGB−11は深度2.97〜4.7m間は、断層変位によって東海層群が礫層に乗り上げたクサビ状の部分を貫いたものと考えられる。5.28〜5.7m間はシルト岩と砂礫が混在することから、断層活動、あるいはその他の原因により、東海層群の崖から崩落したブロックと見られる。

一方、UGB−10とUGB−12は、類似した岩相であり、上部に沖積層相当の砂・ピート、中間に礫層、下部に東海層群が分布する。UGB−10の2.6〜3.0mには腐植土があるが、UGB−12には認められないものの、この2孔間では地質構造に大きな変化はないものと考えられる。

地層の年代は以下のとおりである。いずれも沖積層相当の若い年代を示す。

・UGB−7 、1.70〜1.75m(ピート質腐植土): 850±40 yBP

・UGB−10、1.22〜1.24m(ピート質腐植土): 870±40 yBP

・UGB−10、1.53〜1.58m(ピート質腐植土): 1070±40 yBP

・UGB−10、2.70〜2.80m(腐植土) : 2130 ±40 yBP

・UGB−11、1.56〜1.58m(腐植質シルト): 1440±40 yBP

・UGB−11、5.38m (木片) : 2310±40 yBP

・UGB−12、1.18〜1.20m(有機質砂礫) : 1100±40 yBP

・UGB−12、1.44〜1.49m(有機質砂礫) : 1140±40 yBP

なお、本地区は地下水位が深度1m程度と浅く、ピット及びトレンチ掘削には困難な条件になると予想される。

*(注)“礫層”:沖積層下部層の可能性がある。詳細は「V−1章、調査結果の考察」に述べる。2−4、2−5の段丘礫層についても同様である。