(8)宇賀川周辺の“礫層”の検討

図3−1−9−1図3−1−9−2参照)

@ 河川縦断による検討

図3−1−9−1図3−1−9−2に宇賀川地区、宇賀川南地区(その1)、宇賀川南地区(その2)の情報を総合した上盤縦断図(1)、下盤縦断図(2)を示す。両図は想定される宇賀断層にほぼ平行した断面である。

両図で、礫層の分布標高は、全体に上盤の方が下盤よりもおよそ2〜3m高い。これが断層変位に相当することが考えられる。いずれの図においても、礫層、沖積層の分布標高が北方、河川の流下側に向かって低くなっている。ただし、一部、上盤の宇賀川地区のみ東海層群の上面標高が高い。これは流心をはずれた丘陵部を投影したためである。

下盤縦断図(2)では、中央〜N側(下流側)に沖積層が厚く堆積し、ピートなど腐植土を挟む。現河床*レベルと比較すると、礫層も沖積層も、若干、上面の分布標高が高い。しかし、推定される基底部の高度から判断すると、礫層は現河床と大きな隔たりはなく、これらの点から“礫層”はL2面以降の段丘堆積物、例えばL3面相当の地形面構成層か、または完新世の堆積物の2つの可能性がある。

*(注) 現河床:最近は宇賀川の砂利採取等に伴う河床低下が大きいため、米軍写真による航測図(1948時点)を参考とした。

A 地形面による検討

地形判読によると、調査地の宇賀川北岸の低地の地形面は、宇賀川の南岸(調査地の対岸)のL2段丘面よりも明らかに高度が低い。また、現河床レベルよりもやや高く、段丘化している。“礫層”が段丘礫層とすれば、埋没段丘の可能性がある。

B 層序と年代による検討

本章(2)の項で検討したように、ボーリングUGB−11の深度5.28〜5.70mの、東海層群から崩落したと見られるシルト岩に含まれていた木片の年代が2310±40 yBPで、かつ、上位の腐植土(年代が2130±40 yBP)に被われることから、礫層の形成年代は約2300〜2100 yBPとなる。

“礫層”は、従来、L段丘礫層相当と考えられていたが、今回の調査によると、層序からは沖積層またはL段丘上部の可能性があり、年代を考慮すれば完新世後期の堆積物(約2100〜2300 yBP)の可能性がある。しかし、年代試料が少なく、確定のためには地質構造や年代の補足検討が必要である。