2−1−2 ボーリング調査−B1地区(松阪市小阿坂町:鳥戸断層)

ボーリング位置を位置図(図2−1−2)に、ボーリング結果を柱状図、コア写真(巻末)に示す。また、これを用いて断面図(図2−1−3)を作成した(昨年度の断面図に加筆)。

@ボーリングB1−5の概要

・0〜2.12m:盛土(昨年度トレンチの埋め戻し土)

・2.12〜6.14m:砂礫、礫混じり粗砂。全体が花崗岩質で、花崗閃緑岩、一部閃緑岩の礫を含む。褐色〜黄褐色系で礫は風化、軟質化している。この部分はトレンチT1の壁面に見られたM面構成層相当の段丘礫層に相当する。また、3.40〜3.57mは暗褐色の土壌化層でトレンチで見られた地すべり構造に相当すると見られる。

このうち、5m付近以下は下位の土壌化層(年代はL段丘相当)に乗っているため、L段丘相当の可能性もあるが、岩相が類似しており明確な不連続も認められないため区分が困難である。

・6.14〜6.32m:暗褐色、砂質の土壌化層で、上部ほど濃色である(L段丘構成層相当)。

・6.32〜7.52m:風化砂礫。花崗閃緑岩、一部閃緑岩の風化礫を含む。上部層の土壌化に伴う風化と見られる。

・7.52〜18.0m:風化礫層。花崗閃緑岩礫が主体で頻繁に閃緑岩礫(またはハンレイ岩質礫)を混じり、所々に礫が集中する。礫はかなり風化、マサ化が進行している(風化礫は約50〜70%)。まれに珪長岩礫を含む。マトリクスは花崗岩質の中〜粗砂、コアは半固結状で、見掛け上、棒状である。一部、砂層を挟む(深度11.60〜12.23m、17.26〜17.62m)。

地層の年代は以下のとおりである。

・ B1−5、3.40~3.50m(土壌化層) : 18660±70 yBP 

・ B1−5、6.14~6.20m(土壌化層) : 22700±100 yBP

・ B1−5、8.15~8.25m(土壌化層) : 5900±40 yBP

・ B1−5、10.13~10.20m(土壌化層) : 23150±140 yBP

このように、深度8.15~8.25mの土壌化層は上位層に対して著しく若い年代を示し、逆転している。

AボーリングB1−6の概要

・0〜3.10m:盛土(昨年度トレンチの埋め戻し土)

・3.10〜5.22m:中〜粗砂。花崗質で少量の花崗閃緑岩、閃緑岩礫が混じる。また、多量の雲母片を含む。全体に固結度は低い。3.58〜3.71mは暗褐色で土壌化層と見られる。L段丘構成層相当の可能性がある。

・5.22〜7.66m:礫〜砂礫層:花崗閃緑岩主体で閃緑岩の比較的硬い礫が混じる。マトリクスは花崗質中〜粗砂。このうち、5.82〜6.40mは中砂で、5.95〜6.11mは若干有機質で土壌化層と見られる。

・7.66〜10.40m:礫層。閃緑岩系の礫が卓越し、花崗閃緑岩礫が混じる。礫は半数が風化・軟質化している。所々、酸化鉄、マンガンが沈積しており、色調は褐色系である。風化度からM面相当の段丘礫層の可能性が考えられる。

・10.40〜11.20m:砂質シルト。花崗質の細礫を含み、未固結。フラッドロームと考えられる。

・11.20〜18.00m:風化礫層。花崗閃緑岩礫と閃緑岩礫(またはハンレイ岩礫)が混在し、所々、礫が集中する。礫はかなり風化、マサ化が進行している(風化礫は約50〜70%)。まれに片麻岩、珪長岩礫を含む。マトリクスは花崗質中〜粗砂、コアは半固結状で、見かけ上、棒状である。一部、砂層を挟む(深度11.60〜12.23m、17.26〜17.62m)。

地層の年代は以下のとおりである。

・ B1−6、3.60 ~3.65m(土壌化層) 12210±50 yBP

・ B1−6、5.95~6.05m(腐植土) 21130±100 yBP

・ B1−6、9.75~9.85m(腐植土) 15510±60 yBP

・ B1−6、10.05~10.10m(腐植土) 10200±40 yBP

このように、深度9.75~9.85mと10.05~10.10mの腐植土は上位層に比較して若い年代を示し、逆転している。

以上のB1−5、B1−6では下半部の半固結礫層が類似しており対比される。しかし、既存のB1−3(当地区の最も東の位置)のコアとは花崗閃緑岩、閃緑岩礫を含む点で共通性があるものの、礫の含有量が極めて少ない点で直接的な対比が困難である。

B1−5の7.52m以深、及び、B1−6の11.2m以深のように、花崗岩質で比較的固結度の高い岩相は、鳥戸断層のほぼ中央、昨年度調査のB2地区(当地の南方約2.1km、松阪市伊勢寺町)のボーリングコア(断層下盤側のB2−4の深部)にも認められており、礫種・固結度・風化度・コア形状の点で類似している。

このような固結度の高い礫層は高位段丘構成層相当、または見当山累層等に相当することが考えられるが、ボーリング地点周辺の地表にこのような礫層の分布が見られないことから、対比が困難である。

図2−1−1 鳥戸断層を横切るボーリング調査の位置図(1:2500)

図2−1−2 ボーリング調査詳細位置図−鳥戸断層(1:200縮小)

図2−1−3 ボーリングによる地質断面図(鳥戸断層)